
躁うつ病の増加 現在は双極性障害 双極性感情障害と称されます
最近躁うつ病の多さが強調されています
東京女子医大のうつ病外来の60%以上が躁うつ病といいます
2010年の精神神経学会の発表でも躁うつ病は50%近くになるといいます
滋賀県は名古屋に比べて躁うつ病の多い地域だなと感じていました
名古屋市の総合病院ではそれほど躁うつ病に注目する必要が無かったのです
躁うつ病が少ないのと、躁うつ病ならうつ病とは明らかに違って分かりやすい
のです
殆どがメランコリー親和型性格の単極性うつ病なので治りが良かったのです
その総合病院に4年間在任したが殆どのうつ病の方が治癒するので患者数はさ
ほど増えませんでした
しかし躁うつ病の方は治りにくいことがあります 治療は躁病相とうつ病相の
間を移動するので炭酸リチウムやバルプロ酸で感情の双極の揺れ幅を安定させ
ようとします 最近はラモトリギン=ラミクタールが奏効することが分かりま
した 問題は皮膚炎ですが、コツを知ると安全に使用できます しかし皮膚炎
が生じた時は発疹の段階で薬剤を中断すると回復します それを超えてしまう
と入院になることがあります
これはうまくいく時は見事に効果がありますが、そうはいかない場合もありま
す
両方の薬物で浮腫が出る患者さんにジプレキサを処方したところ副作用も無く
安定しました
医師の診立ての問題
双極性精神障害T型(典型的な躁うつ病)は分りやすいのですがU型(躁状態が目
立たない軽躁状態)は見逃しやすいのです
医師にはうつ状態の報告しかしないからです
患者さんの病織が不十分であることに加えて周囲の関係者もちょっと元気すぎ
ると感じる程度だったり、元々活発なので元に戻ったのかと思わせます
しかし仕事をしすぎる、家事を睡眠を削ってやるので次第に疲れる、あるいは
躁病相とうつ病相の差が大きくなる
こうした経過を躁うつ病としてではなくやりすぎる性格と捉えて説教する医師
が居たり放置する医師も居ます
しかしバルプロ酸一つで安定することがあります
これは他人事ではありません 私自身も気付くのに時間がかかることがありま
す
躁うつ病の治療の難渋
この方達も治療の方向が見えてくれば改善します しかし躁病相を自己の理想
像と考えて躁病になることを好み少しでも抑うつの兆しがあると過敏に反応す
る方が時々居ます
こうした方達は中々病織を持ちにくいため医師と目指す方向が一致しないこと
があります
この場合は時間がかかりますが、それほど悲観的になる結果には至りません
医師が根気よく説明したり、病の話題を角度を変えて話し合えば少しずつ折り
合いの場=関係ができます
躁うつ病は治癒するか
結果を言うと躁うつ病は長い治療を要します 中間期≒安定期に治療を中断し
ないで治療を続けると次第に安定してきます
中断すると再来した時には悪化していてやり直しになります これが結構大変
なので人生に払う犠牲はばかになりません
次第に居場所を失っていく方も居ます
長い目で治療を続けると社会的にも安定します
ただ例外があります 思春期に躁うつ病の症状を呈していた方の多くは思春期
を過ぎれば自然治癒します
多くの思春期の方を見てきましたが、躁うつ病が成人になって定着するだろう
と思われる方は少ないのです
クリニックを開設して9年目に入りましたが、思春期を過ぎても躁うつ病とし
て治療を続けている方は2桁も居ません
思春期の気分障害は成人型とは異なる特徴を多く持っていますが、まだ試行錯
誤の域を出ません それでも多くの方が改善する、治癒するのは治療の力より
も本人の成長の力でしょう
何となく成長する観葉植物のように水をやりすぎてもいけないが不足してもい
けないと気を配っている内に成長していくのと同じ印象を受けます
こうした方たちを診る時は症状だけではなく人格的な成長を診ています
それが楽しみの一つです
