UnionUp2013 2013年5月19日(日) 「みやこめっせ」
 
新聞記者が語る『マスコミと労働組合』 新聞労連前委員長・毎日新聞記者 東海林 智さん
(*当日の講演録音をJMIU京滋地本の責任で文章化しました
 新聞の一番大きな役割りは、皆さんもご存知の『国民の知る権利に応える』ことです。
 新聞記者はいろんな分野で働いています。事件を追って警察をウオッチャーしている記者、裁判を担当している司法担当記者、政治を追いかける政治部の記者、経済問題を追いかける経済部記者、また、教育やスポーツ担当などさまざまな分野で活動しています。
 『国民の知る権利に応える』ことが、新聞の役割りだが、新聞記者の一番の役割りは『闇を照らすこと』だと思っています。私たちは、取材を通していろんな場面、悲惨な現場に立ち会いますが、その中で我々がやらなければならない事は『闇を照らす』ことが、ジャーナリストの使命と考えています。
 2008年末のリーマンショックで『派遣切り』の嵐が吹き荒れ、全国で多くの派遣労働者が首を切られました。
 2008年にクローズアップされたが、それまでも都合のいいように首を切られて使われてきた、そういう派遣労働者の歴史がありました。
 しかし、2008年のリーマンショクまで、なかなか派遣労働者の厳しい環境、苦しい思いは報道されませんでした。
 私は労働関係の取材が長いので、(2004年に)製造業派遣が解禁になったとき、あるいは派遣法が変わったとき、いろんな場面で派遣労働者の実態を書いてきましたが、ほとんど大きな問題として扱われませんでした。
 けれど、2008年末に、大量に派遣切りがあったとき、初めて派遣労働者がクローズアップされました。それが『闇に光が当たった』ときでした。
 ずーと無視されてきた派遣労働者が、いかに過酷に、いかに簡単に首を切られて使われてきたかが、あの時(2008年末)初めて照らされて、明らかになった訳です。
 私は、『年越し派遣村』が東京に作られましたが、そこに新聞記者としてではなく、派遣村を運営するスタッフとして参加していました。
 その『年越し派遣村』は労働組合が中心となって、そこに市民団体も連帯して『派遣村』を作ったのです。
 なぜ『派遣村』を作ったかと言うと、「仕事を無くし、住むところも無くした労働者をなんとか助けなくてはならない」
と言う思いがありました。
 しかし、もうひとつの狙いとして、多くの困っている派遣労働者を集めて、そこで声を上げていくことで派遣問題に、あるいは、労働問題に注目を集めて、国民の皆さんに(派遣問題を)知ってもらおうと。
 「こういうことが本当に起きてるんだ」ということを、『目に見える形』で伝えようということで『年越し派遣村』は企画されました。
 そういうことが『闇を照らす』ことなんです。新聞の仕事としてこの『闇を照らす』ことが非常に重要な仕事としてあります。
 しかし今日、会場におられる皆さんは、私の『闇を照らす』と言ってることに、首を傾げてる人もおられると思う。
 「新聞は、あるいはメディアは、本当に真実を伝えているのか?」、あるいは「国民の知る権利に応えているのか?」そういった疑問を持つ方が、多分、この中にたくさんいると思います。
 「政府の発表を垂れ流しているんじゃないか?」あるいは、「権力に迎合して都合のいいことばかり報道してるんじゃないか?」あるいは、「労働組合が1万人集めて集会をやっても1行も新聞に記事など載らないけど、どういうことだ?」、それは本当にその通りだと思います。
 そこで、私たち新聞労連、新聞労働者の労働組合の存在が必要な訳です。今日も、この会場に京都新聞労働組合がブースを開いています。
 そういう『国民の知る権利』に応えていないかも知れない、充分応えられていない会社をチェックしていく、それがやはり労働組合の役割りなんです。その役割りを持つのが新聞労連、全国の新聞の労働組合が集まった連合体、産別に結集している新聞労連なんです。
 私たちは、普通の労働組合です。自らの労働条件の改善、賃上げ、そういうものに加えて、報道機関の労働組合として、『報道のあり方をチェックする』、あるいは『経営のあり方をチェックする』そういう役割り、そういった役割りを私たち(新聞労連)は担っている、と考えています。
 新聞労連を結成したときのスローガンは、これは今でも私たちが一番大事にしているスローガンですが、『戦争のために再びペンを握らない。カメラを撮らない。輪転機を回さない。』これが私たち新聞労連の結成以来、大事に大事にしているスローガンです。
 私たちは、そういう視点で自らの行動をチェックしております。かつ、会社が乱暴な議論を行っていないか、そういうこともチェックしております。
 具体的に新聞労連といえば、『新聞研究部』(略して)『新研部』が各新聞毎、単組毎にありまして、『新研部』が、たえず報道のあり方や、権力に迎合していないかをチェックしています。
 そして、1年に一度『しんけん平和新聞』として、私たちの思いを伝える新聞を発行し、あるいは、シンポジュームを開くなどして、新聞がおかしな方向に行かないように、私たち(新聞労連)が、言葉は偉そうですが、『睨み』を利かしています。
 ここで、『新研部』の活動のひとつとしてやってることを紹介します。
 『しんけん平和新聞』を1年に一回作っています。これは、現在、第7号まで発行されています。
 これは、大きな見出しで書いていますが、「日本が無条件降伏」「ポツダム宣言受諾」これは、(日本が)敗戦をした当時、1945年8月15日の新聞を、現在の新聞が伝えたら、どういう視点で伝えるかと作った新聞です。
 この新聞の中身は非常に盛りたくさんなんですが、「広島で何があった」「長崎で何があった」そういうことも現在の記者が、とらえなおして書いていますが、例えば、短い小っちゃい記事ですけれどもこんなことを書いています。
 「天気予報復活へ」と、いう記事が載っています。実は、天気予報は戦争中3年以上に渡って、天気予報は新聞掲載が禁止されていたんです。『重要な軍事情報だから』と、いうことで新聞には載らなかったんです。
 「敗戦になって、天気予報が復活した」そんな記事が載っています。これが(しんけん平和新聞の)第1号でした。
 第2号では、こんなことを報道しています。第2号は正に今、話題になっている『憲法』の問題です。
 「戦力不保持を明記」「世界平和を希求」こういうように当時、憲法が作られた、どういうふうに作られた、どういう風に国民から迎え入れられた、そういうことをこの新聞(しんけん平和新聞)として紹介しています。
 これを読むと、今、自民党にも聞いて欲しいことが書いてあります。例えば、当時の首相である、吉田茂がこういうことを言っています。
 吉田茂は、「国民の自由な意思によって確定し」、いいですか「自由な意思」ですよ、「アメリカに押し付けられた」とは言っていない訳です。「国民の自由な意思によって確定し昨年十一月三日に公布された日本国憲法が、いよいよ本日から施行される。新憲法は世界に誇るべき、まことに立派な憲法だ。しかし、いかに立派な憲法でも、国民が本当にその精神を理解し、その理想の実現に努力していかなければ、国家の債再建は期待できない。」と、ちょっと飛ばしますね。その後の方で、こう続けています。
 「・・・この憲法を尊び、この崇高な理想を達成するために絶えざる努力を続けることを今日、この場所で再び誓いたい。そして私たちが国家生活の末端まで新憲法の精神をしみとおらせ、徹底するならば、必ずわが国は日ならずして自由と平和を愛する幸福な国家として復興し、世界人類の進歩に大いに貢献すると信じて疑わない。」こういうように当時首相の吉田茂は述べている訳です。そういうことが書いてあります。
 これは、本当に、今の自民党の議員たちに聞かせてやりたい。
 「あなた方はこの憲法を生かすということ、守るという努力をしてきたのか。」
 「あなた方はこの憲法のために何をやってきたのか」
 「何の努力もせずに今、憲法を変えようとしている。」
 しかも憲法96条を変えることによって、自分たちがやりやすい立法というのを実行するために恥知らずなことを、今の自民党の安倍首相は言ってる訳です。
 それを批判する意味でも、私たち新聞労連はこういう新聞を作っています。
 そのほかにも、「どういう風に戦争が始まったのか」という開戦の状況、2.26事件を通して言論の自由が奪われていった過程、そして、沖縄を切り捨ててて基地を押し付けた過程。
 さまざまな問題について毎年1回、私たちはこういう新聞を発行しています。
 そこでPRなんですけども、今日はこの新聞(しんけん平和新聞)全部7号分ワンセット500円で、京都新聞労組のブースで販売していますので、ぜひ、お買い求めください。
 そして、今の改憲勢力がいかに出鱈目であるか、私たちはどういう歴史を背負ってきたのか、そのことをぜひ学んでいただきたいし、大いに活用していただきたいんです。この(しんけん平和)新聞を。本来一部100円で売っているんですけど、今日、全体9部で500円です。ぜひお買い求めいただきたい。
 そのような、さまざまな活動を私たち(新聞労連)はやっています。何も「新聞労連が偉い」ということを言いたい訳ではありません。
 先ほど、最初に申し上げましたように、労働組合はさまざまな役割りがあったし、一番最初に春闘がありましたように、私たちも労働条件、賃金を上げて行くことも大事な役割りです。
 しかし、それ以上に私たち(新聞労連)は、労働組合として社会の中で役割りを果たしていかなければならない。労働組合の社会的役割として、これ(報道の自由)を私たちは死守していかなければならないと思っています。
 私たち(労働組合)は、反省をこめて言えば、自分らの労働条件向上に、こだわるあまり社会的な連帯活動が、すごく弱くなっていた部分もあると思います。
 だからこそ、大阪の橋下市長や、安倍首相に労働組合を攻撃される訳です。「労働組合は既得権益にしがみつき、そして自分たちの利益ばかりを考えている。」
 そういう彼らの批判に私は全く納得していませんが、彼らのそういう批判に、労働組合に入っていない一般市民がある程度の理解を示す、ということだって実際にはあります。
 その部分でいえば、私たち(労働組合)は、やはり社会に対して、役割りを果たして行く以外に、打解けていく、そういう力が少し不足していたのかもしれません。
 そういう意味でいくと、今日のような集会(UnionUp2013)は、非常に意義が大きいいと思います。
 私たちは、労働組合の役割りというものを果たすべく、きっちりと社会の中で活動しなければならない、そのように思います。
 それが一番ストレートな形で現われたのが、東日本大震災の際の労働組合のボランティア活動だと思います。
 全国のさまざまなボランティア団体が被災地に駆けつけました。しかし、労働組合が一番、突出的に長い時間に渡って、自腹で現地にボランティアを送ることができました。
 そういう力を労働組合は持っているんですね。そういう力を私たち(労働組合)は発揮していかなければならない、そのように思います。
 労働組合は、民主社会において欠かすことができない重要な役割りを、実は担っていまして、GHQが日本を占領してすぐにやったことは何か?私たちが今、一番大事にしている憲法、この憲法を作る前にGHQは、『労働組合法』を作ったんです。
 日本の労働組合法というのは、世界でもまれな労働組合を作りやすい法律なんです。何でそういう法律が作られたかといえば、GHQは労働組合を作ることで、天皇制ファシズムに染められていた日本を民主化をしようと考えたんですね。
 つまり、民主国家を作る上で労働組合というものが非常に大きな役割りを担っているといっていい。そう考えると私が何が言いたいのか分かりますけども、安倍首相や、橋下市長が労働組合を攻撃するということは、これはイコール民主主義に対する攻撃なんですね。
 彼らは、民主主義が気に食わないんだと、私は思います。だから私たちは、彼らにいくら攻撃されても全然ちじこもる必要はない訳です。
 私たちは民主主義の担い手として、正々堂々と胸を張って労働運動をやっていきましょう。
 そのためには、自分の組織に閉じこもらず、広く社会に打って出て多くの市民、非正規労働者も含め、たくさんの人たちと手を結び、社会的な連帯を広めていくことが、いま求められていると思います。
 私は、いつもこのような場所や講演を頼まれると、新聞労連の腕章をしていく訳です。この赤い腕章を「カッコ良くない」「ダサイ」という若い人もいます。けれども私は、自分が何のために労働組合に加入しているのか、私は労働組合で何をしたいのか、労働組合とは何なのか、ということを忘れないためにも、いつも赤い腕章をつけていろんな場所に出て行きます。何も恥ずかしいとは思いません。
 新聞労連の委員長を2年間やっている間、やはり同じように、赤い腕章を着け続けて、若者の前へ、仲間の前に出続けました。そしたらですね、新聞労連の青年女性部がですね、若い人たちが、「赤い腕章カッコいい」と、そこまで言うようになりました。ですから私たちは、赤い腕章に誇りを持って、私たちが、何のために組合を作ったのか、何のために活動しているのか、それをいつも忘れずに、これからも頑張っていきたいと思います。
 共に頑張りましょう。ありがとうございました。
 (左)遠藤アナウンサーのインタビューに答える東海林さん (右)熱心に講演を聴くみなさん
 
 
 1年に1回発行されている新聞労連の新聞研究部の「しんけん平和新聞」