UnionUp2013 2013年5月19日(日) 「みやこめっせ」
パネルディスカッション『ブラック企業の見分け方』
*当日の録音をJMIU京滋地本の責任で文章化しました
コーディネーター:北村 憲司さん(私教連−京都橘大学就職支援課)
     パネラー:五十川 進さん(私教連−立命館大学キャリアカウンセラー)
           川久保 尭弘さん(京都POSSE代表−京都大学大学院博士過程在学)
           東海林 智さん(前新聞労連委員長)
           中島 正雄さん(府職労連−府立大学公共政策学部労働法教授

 
北村
 ここ数年ですが、ブラック企業というものが非常に話題になってきています。とりわけ新卒で就職する学生にとって、非常に重大な問題となってきております。 新卒者を大量に採用しまして、長時間労働ですとか、後は企業が言うがままの労働者にするための徹底した研修、仕事に向かないと企業が判断したら仕事を取り上げて、企業を自主的に辞めるまで課題を課すというような状況、さらには労働者が「全てが(自分が)悪い」というように思い込まされてメンタル問題を抱え、廃人にまでなってしまう。そういった状況にどんどん押し込めていく、そういった状況も発生しております。 こういった、今話題のブラック企業にはどのように立ち向かっていくべきなのか、どのようにして見分けるのか、さらにはそういった働く人の権利を確立し、働き続けられる社会を作り出していくためにはどうしたらいいのか、について考えていく企画でございます。

五十川
 こんにちは。私は立命館大学で職員をやっております五十川と申します。
 ブラック企業についてお話をさせていただきます。皆さんも最近よくブラック企業と言うことをお聞きになっていると思います。安倍首相も国会で話をせざるを得なくなるほど、社会問題化してきていると思います。
 私は、大学職員と言うことで、学生あるいは卒業生から、いろいろと相談を受けます。その視点で話をさせていただきたいと思います。
 今日、参加されている皆さん方は、若者・青年労働者やベテランの方々がおられますが、それぞれの自分の問題として、あるいは子供さんとかお孫さんの問題として直面しておられるのではないか、というところで、現場でそれがどうなっているかという話をします。 ブラック企業とは、そもそも、異常な労働条件とか、過酷な労働条件・労働環境・人間関係そういった中で労働者の身体も心も蝕まれてしまい、人格破壊・廃人状態にしてしまって挙句に使い捨てにしてしまう。当面の企業の利潤追求のために人格破壊にしてしまう、そういった企業が一般的な(ブラック企業といわれる)話ではないかと思います。
 従来からブラック企業と言うことは言われていました。ベテランの皆さん方は、よくご存知かと思いますが、例えば、暴力団の会社とか、あるいは詐欺をする−お年寄りをだまくらかしてやる詐欺商法・マルチ販売−そういった会社がブラック企業としていわれていたと思います。 京都いいましても西大路七条に今も残っているビル、あれは以前『日栄』という中小企業の金融の会社でした。彼は『いつでも中小企業に金を貸す味方・救世主』と言うことでマスコミが持ち上げていましたが、しかし1回でも返済が滞ると、よくご存知でしょうが、中小企業経営者の「腎臓を売れ」とか「目玉を売れ」と言うことで、実際に脅迫的に海外に連れ出そうとする。そういったことを平気でやっていまして、社会的に指弾されて会社は解散しました。その後『商工ローン』という会社でちょっと生き延びましたが、そういった会社が従来からあったブラック企業だと思います。
 今日、話をさせていただくのはそういった企業とは若干異なっておりまして、新しい、私は『新型ブラック企業』と言っておりますが、新しいブラック企業についてお話させていただきたい。 新しいブラック企業について、最近NPO法人POSSEの今野代表が本(「ブラック企業−日本を食いつぶす妖怪」)を出されております。この中で今野さんが、新しいブラック企業の特徴として『選別型』『使い捨て型』『無秩序型』と分類されています。
 『選別型』とは、私も卒業生から相談がありましたが、従業員80人のITコンサルタント企業といっているが、実質派遣会社す。こういう会社が実は、新卒社員を25人から30人して、ほとんどの新卒社員が使い捨てにされてしまう訳です。内定に時期、4月1日の採用前から『研修』と言うことで、訳の分からない研修、あるいは会社が決めた資格を取らし、過酷なトレーニングをして、その中でもう実力・能力ではありません、会社の言う通りに働く人間だけを残して、ちょっとでも会社に異をとなえる人間は『特別研修』ということで大変な差別をしていく、言葉の暴力で押し潰してしまう、と言うようなことがあり結局2、3人しか残らない、ということが平気で行われています。
 『使い捨て型』というのは、川人・宮田弁護士の著書(「就活前に読む本」)で紹介されています『99ショップ』という会社であった実例ですが、清水さんという方が非常に過酷な労働、就職氷河期で当初(彼は)フリーターだったのが、やっと中途採用で正社員で就職した。これがなんと連続37日間の仕事、例えば4日間で80時間の仕事を強いられる。4日間で80時間の仕事ということは4時間しか自由時間がないことになりますね。そういう過酷な仕事をし、しかも『名ばかり店長』なので、残業手当てが出ない、ということになって、過酷な労働で『うつ病』に罹患してしまい、残業代、慰謝料支払いの裁判を起こされた。それが2011年東京地裁で判決が出て全面勝訴しました。残業代もほぼ全額、慰謝料も払わせた。
 今、話題になっているユニクロは『選別型』と『使い捨て型』の統合型、もっとたちの悪いブラック企業じゃないかと私は思っています。
 『無秩序型』は、私は『モラルハザード型』と呼んでいますが、これも超大手の電通という会社に大島さんと言う青年労働者がおられました。 3日に1度は徹夜、仕事が行き詰まったら上司から靴のかかとでたたかれる、挙句、靴にビールを注いで飲まされる、という正にモラルハザードな『いじめ』の非常に厳しい状況があり、彼は『うつ病』に罹患し、悲しい結果ですが自殺され、ご両親が会社を提訴され、長い裁判の結果、電通の注意義務違反ということで1億2千万の賠償命令の画期的判決で全面勝訴されました。 こういった事例は、皆さん方の周りでも数多くあるのではないでしょうか。
 新型ブラック企業の特徴は、『合法的装い』つまり先ほどの事例でいえば、「店長は管理監督者だから残業手当はいらない」ということ、退職に追い込むときも「全て自分が悪い」とことにさせる、つまり『自己都合退職』させる。先ほどのITコンサルタントの80人の社員規模の会社が30人採用するところもそうです、「お前はブス」だとか暴言で人格否定して全て自分が悪いと自己都合退職に追い込む。 もうひとつの特徴が急成長企業です。社長がカリスマ的でマスコミでもてはやされる、社長のカリスマ性で社員をマインドコントロールしていくのに欠かせない事項です。
 新型ブラック企業が、従来型と違うのは『若者をターゲットにしてる』ということです。新卒とかいわゆる若者を対象にしていることです。 私がなぜブラック企業を告発するのか、なぜブラック企業はだめなのか3点あります。
 一つ目は、目先の利潤追求のため、人格破壊させてしまう会社ということです。こういうことを許すと、今社会問題化している『いじめ』とか『体罰・ハラスメント』という事に対してこれが構造的・社会的に是認されてしまうことになる。誰にでも人格を傷つける、破壊する権利はありません。根本的にブラック企業の資質、モラルとして指弾されなければならない、と考えています。
 二つ目は、若者を対象にしていることで、若者はこれからの日本社会を支えていきます、経済も文化も。その若者の中に大変な閉塞感と絶望感が漂ってくる。これは日本経済、活力をどんどん小さくしてしまいます。これは許せない問題です。
 もうひとつは、ブラック企業が増える中で、まともな企業も、全て若者のせいにしてブラック化していく、その旗振り役、まともな企業のブラック化の先兵になって行く。 そういった理由で私はブラック企業は徹底的に指弾すべきだと考えています。 新型ブラック企業の現象は特別なことではないと思います。ブラック企業を容認すると、例えば今、行われております電機業界の13万人リストラとか、あるいは、経済同友会の長谷川代表とか竹中平蔵などが主張する『解雇自由化』『ホワイトカラーエグゼンプション』など、マスコミが無批判に垂れ流している風潮が当たり前のこととして是認されてしまいます。従ってこのブラック企業問題は、労働問題全般に関わってくるということで、広く国民的な共通の課題・認識化することが必要と考えています。また、ブラック企業を許さない運動をもっと高めることが必要です。


川久保
  私は、NPO法人POSSE京都支部代表の川久保と申します。私自身は大学院に通いながら日々、年間数十件以上の労働相談・生活相談を受付けています。POSSE全体で年間1000件以上の労働相談を受けていまして、その中で、ここ数年、2009年から目立ってきたのがブラック企業からの相談です。
 今日は、実際の労働相談を受け付けた事例からどういった対処法があるかについて議論できればと思います。
 確か2012年、大阪の20代後半の女性の方からの相談です。あるIT企業で、結構大企業でして、数百人規模の支店が大阪にあり、東京にも支社があるそういった企業ですが、そこで正社員として雇用されていた女性がいたんです。
 この会社の業務形態としては、IT技術者として、別の企業にある種の出向させるような形で報酬を得るという業務形態をとっていまして、出向を断られると「もう(会社に)来なくていい」と言われてしまうといった形で仕事がなくなって、本社待機になる。ただ正社員契約なので、待機中も賃金については支払われ、次の仕事を探す、会社が見つけるのを待つというような業務形態でした。
 ここで、(この女性の)部長から「お前能力がない」「公認の資格がない」「能力を示してみろ」と言われてしまい、大体1週間で3つ資格を取ったんですけど、1週間で3つ資格を取るというのも並大抵の努力じゃないと思うんですが、それでも部長からは「一切評価しない」と言われてしまった。
 これだけならまだしも、継続してずうっと「お前は能力がない」と言われ続けたんです。実際(この女性み)話を聞いてみると、この方、資格をハイスピードで取ったと言うことで分かるように平均値からいうと結構優秀な方でして、この人が「能力がない」というのは、明らかに言いがかりだったということなんですが、途中で『うつ病』になってしまうんですね。つまり自分がどうやったら改善するかも分からないのに仕事を干されている、ということがあって、心療内科、病院に通うようになりました。
 そこでメンタルクリニックで医師の面接を受けながら、すこしづつ薬を飲みながら(うつ病を)直して行こうと、落ち着いた矢先に、ちょっとしたことからこの部長にメンタルクリニックに通っていることがばれてしまって、そこで何を言われたかというと「その病院を教えろ」というふうに言われまして、しょうがないから教えると、上司が病院までやってきて医者にあることないこと吹き込んで「お前は甘えているんだ」「こんな会社辞めた方がいいよ」といったような話をしてくる「その方があなたにとっても幸せだし、私たち(会社)にとってもしあわせなんだ」というような話を医者まで巻き込こんでしてくるんですね。
 普通に考えても、うつ病になってる方に、これをやられてしまうとものすごい心理的苦しさになってしまいますし、本当にこの人はあと寸前のところで自分から会社を辞めるというふうになっていました。
 これは「余りにも不当だ」と思われるかも知れませんが、この話のポイントは、この方は最後の最後まで「部長は自分のために親身になって相談に乗ってくれているんだ」というふうに思い込んでいた、ということなんです。最後に、たまたま中の良かった(同僚)社員の方に「それはちょっとおかしんじゃないか」と言われて、さすがにおかしいと感じる、気づいていく内に(POSSEが)連絡を受けた、という事例なんです。
 このようなやり方をやる企業は非常に多いんですね。つまり、精神疾患に企業が追い詰めることによって本人が自分から「辞める」と言い出すのを待つ。それによって退職勧奨、事実上解雇を成し遂げてしまう、そういうやり方です。
 このように、ブラック企業というのは、どれだけ優秀な人材であろうが、なかろうが、長期間雇うつもりは、初めからないない、というのが特徴です。
 もうひとつは、私が2010年に初めて京都POSSEで相談を受けた事例ですが、京都府出身の26歳の方からの相談でした。
 ある工場に勤務していたんですが、その上司が『クラッシャー上司』と呼ばれる悪名高い人物で、その方(相談者)は骨折して、ずうっと会社を休んでいたんですけど、骨折してるにもかかわらず「会社に出て来い」と(上司から言われた)。
 どういう仕事をしてるかというと、非常に重い物を持ち運ぶ仕事だったんです。だから、足を骨折してるとこれは出来るはずないんですが、無理やり「出て来い」と言われ出勤したところ、工具に『レンチ』というものがありますが、レンチを投げつけられるとか、あるいは、1ヶ月通して1日も休みがない、文字通り1ヶ月間30日間働いているというような状態が続いて、本当にくたくたになっていました。
 この人も、なんども過労死の危険性がある位のレベルに行っているので、とにかく「会社と交渉しよう」という話をしたんですが、なかなか「うん」と言わないんです。「会社にも恩がある」とか、あるいは「会社と争うのが怖い」と言い続けているんです。
 最終的に、この方は4回目の説得でようやく動いてくれまして、紹介した労働組合を通じて何とか休職することが出来ました、と言う事案なんですが、この方も紹介することが出来なければ、うつ病になってかも知れませんし、最悪の場合過労死されていたという危険性あるといわれていました。
 このような企業が増えているということは、統計からも分かると言われてまして、特に今、二十代三十代の過労死・過労自殺というのが、40代以上を上回っているという状態にあると言われてます。
 これは実際、私たちが相談を受けている実感でもありまして、昔からの長時間労働という違法企業の問題だと思うんですが、それにしても仕事を教えずに、すごい業務量を1人に課してパワハラも相まってくるので、本当に入社して、ワタミの事例なんか象徴的ですけど、半年とか1年以内にもう亡くなってしまうということが本当に多発してるんです。これは京都でもそういった事案が増えていると思います。
 こういうところ(企業)に対処するのに、じゃあどういった対処すればいいのかという話ですが、今日は、見分け方についてあまり言わないが、他のパネラーの方が言ってくれるだろうということがありますけども、究極的には、入ってからブラック企業なってしまう会社もあるんで、悪い弁護士や社労士の方に入れ知恵されてしまった、ということで途中から、業務形態を変えてくるという方法もありますので、どうやったらこういう会社に、ちゃんと権利を主張できるのか。そのポイントになるのが一つが、「あきらめない」と、いう当たり前に思えるかも知れないけど、とにかく「自分が悪い」と思い込んだりだとか、「痛い目を見るんじゃないか」と思ってるんのが、ブラック企業に勤めている方ですので、まず、これを打ち破る機会が必要がある、ということになります。
 本当に重いんですよ、特に、会社側に付いた弁護士が賃金不払いの請求をしたら逆に「名誉毀損で訴える」という書類を出してくるということは良くあることなんです。これは当然法律的には、問題外のことですが、仏に働いている人にとってはもう孤立無援で、ときにはご両親の方も「自分が若いころも苦労して働いたんだから認めてもらえるまでガマンしなさい」と言われてしまって、あるいは「労働組合なんかに入ったら危ない」というように親とか、教師から言われて泣く泣くあきらめるというようなケースも何件もあります。
 最近、若干変わってきてるんですけども、やはり、こういった本人が、孤独とか孤立ということに漬け込んでブラック企業は、悪いことしてくるということがあるので、いかにそれを周囲の家族なり地域社会なり教員なり、あるいは、それこそ労働組合や私たちのようなNPOが支えていくことが社会手な課題になっているんじゃないか、いうように思っているところです。
 特に、「諦め」という問題が一番大きいんですけれど、重要なのは、いろんなお話がこの後もあると思うんですけれど、労働法を使い以前の問題として、もう諦めちゃってるという観点があるんです。
 実際、私も午前中に1件労働相談を受けていたんですが、その方は、兵庫のある新興企業に勤める、20代前半の方でして、賃金が払われていない、月80時間くらい賃金が払われていない時間があったんですが、労働基準監督署に申し出て、指導してもらった。ただ、本人は名前を明かすと、いじめられたりするかもしれないので「匿名申告」という形式を使って、労基署に入ってもらった。そうすると、さすがにボロが一杯出て、労基署が指導したんですけど「問題だからちゃんと労基署に報告してくれ」と。しかし、会社が次にやってきたのは何かというと、「残業を申告するときに40時間分以上の残業付けないように」というように全社員に通達したんです。
 それに違反する社員にはいじめを行う、いうようなことを次に始めました。こうなってくると、行政としたらもうこれ以上、手出ししようがない。法律を持ってるんだけど何も出来ないんだという状態に置かれまして、この方(相談者)は、今日午前中に話しをして「労働組合を活用する」ということを含めて本当にそれしかないんじゃないかという話をしたということがありました。
 まとめると、わりといろんなことを変えていく必要があると思います。ブラック企業はこれまでの日本社会の常識があるから、捕まえても非常にずるいという一貫したことをやってると、いうような企業なんで、やっぱり社会的処世術を変えていく必要があるんじゃないかというように考えています。
  さっき、親が止めてきたりするという話もしましたが、これなどは通用しないということがありうるんですね、先ほど五十川さんからも言っていただいたように、うつ病になってしまって働けなくなる方が多いんで、本当にひどい人でPOSSEに相談きた方でうつ病にさせられてしまったせいで、働けなくなって、ずうっとネットカフェを転々として最後、生活保護を利用せざるを得なかった、という人が少なくないんです。
 そういう人が出ないということを考えるためにも、我慢してもしょうがないんで、会社とおかしいことは交渉しようということを現実的な選択肢としていっていくことがやっぱり必要だと思います。
 そのために、問題提起と現場でやってらっしゃる組合の方にも、ブラック企業対策ということを本当に協力してやっていければと考えていますし、そのためにどういった取り組みが必要なのかということをこの会場で、ディスカッション出来ればと思います。

東海林
 お二方の話で具体的なことが見えてきたとおもいますが、具体的な事例を1点だけご紹介したいと思います。あと、特にここにも若い方いらっしゃるとすれば、(ブラック企業に)入る前の見分け方ですよね。あとでそのことは出ますかね、ちょこっとだけ話したいとおもいます。
 具体例で言うと、これはもう実例を出して言いますけども、『サークルKサンクス』というコンビニエンスストアーがあります。そこで、30代の人なんですけども、30代のアルバイトの方をサークルKサンクスが使ったんです。アルバイトといいながら、この人、当初はですね、夜の10時(22時)に(店に)入って朝の8時まで(仕事を)やるというシフトだったんですけど、働く中で一生懸命働くので経営者の方から「君アルバイトだけども月給手当てにするよ」というように言って「月24万円の月給を払う」と言うので、アルバイトの彼を夜間シフトのまま、月給制に移行したわけです。
 「24万円払われるならいい話だな」と思うんですが、その後、彼の生活がどうなったかというと、極端に言えば「24万円で彼の生活全てが買い上げられた」と言う状態(になったん)です。
 基本的には夜の10時(22時)からシフトに入るんですけど、夜の10時にシフトに入って、朝の8時で終わるはずなんですが、8時になっても「今、ちょっと人手が足りないから」とか「店が忙しいから」とか(言われて)昼くらいまで延々と使われるわけです。昼くらいになって帰ろうとすると今度「いや、ちょっとレジのおばちゃんが来ないからちょっと待ってくれ」とか言って、「でも疲れたろうから少し休んで下さい」と言って、コンビニエンスストアーの裏のバックヤードで仮眠をとる、と夜中ずうっと働いているわけですからね、夜の10時から朝の8時まで。ちょっと、バックヤードで仮眠をとって、仮眠をとってる間にも、ちょっとレジが込んでくると起こされて、仕事をさせられる。  そういうことをやってるうちに家に帰れなくなったんですね。彼が一番ひどいときは、月に3日しか家に帰れなくなった、後はずーとコンビニに住み込みで働いてるような感じです。
 「飯はどうしたの?」「飯は全部廃棄弁当とかコンビニにおいてるやつとか、それを食わされていた」と、「風呂はどうしたの?」「風呂は近所の銭湯に30分だけ時間を貰って行ったりしてました」という形で、極端な話かも知れないですけど、そういう形で、月24万円でほとんどの自分の私生活も含めて売り渡してる状態になってました。
 これは、経営者が非常にブラックであるということは勿論言うまでもないんですが、もう一つブラックなことがありまして、これは何かと言いますと『サークルKサンクス』本体ですね。彼は、余りにもひどい状況になって、最後は意識が朦朧としている中で働らいているような状況なのです。意識が朦朧としたなかで働いいる状況を、全然連絡が取れないことを不思議に思った彼の姉が、たまたまそのコンビニに行って、その意識朦朧として、耳の奥から血を流しながら働いている、オーナーに殴られたんでしょうね、血を流しながら意識朦朧として働いている自分の弟を彼女が救い出すわけです。
 「もう、すぐ辞めろ」と言ってですね、その場から彼を奪還して、労働組合に加入するわけです。労働組合に加入して、彼は完全にうつ状態になっていまして、うつ病と労災申請をする、あと労働組合を結成して会社に損害賠償を請求する、ということをやったんですけども、そのコンビニの店がひどい扱い方してたんですが、フランチャイズ本体の『サ−クルKサンクス』が労働組合の団体交渉の要請に一切応じない。これはもう企業としてブラックだと思います。
 『サークルKサンクス』が団体交渉に応じなかった理由は、「(彼が働いていた)その店がフランチャイズではない。フランチャイズ料払って個人が営業している店ではない。加えて「自分(サークルKサンクス)とこ直轄の店ではない、自分のところが『この店やりたい人』と言う人を募集して『やりたい』と手を上げた人に権限を委任してやらせている店である。だから、我々は全く関知しない。だから団体交渉にも一切応じません。」という形で、何の話し合いにも応じなかった。だから、二つの意味でブラックなんですね、この『サークルKサンクス』というのは。
 最終的には、彼は労災と認定され賠償金も取るわけですが、このように人の人生を丸ごと買い上げて操業してるのと一緒ですから、そういうことすら今行われてる。
 しかも、正社員にもせずにアルバイトのまま、「正社員ならそれでいいか」という、そういうわけではないですけども、アルバイトのまま、そういう使い方をして、ぶっ壊されている、で『サークルKサンクス』は何の責任も取らない。何の責任を取らなくていいわけではないわけです彼らは。
 『サークルKサンクス』は、フランチャイズ料そこから上がってくる利益ということは、完全に彼等は持ってるわけですから。そういう、フランチャイズのブラックも最近目に余ると思います。
 もう1件だけコンビニ関係で言えば『某コンビニ』、ここもアルバイトの学生に対して、売り上げ、各店舗ごとに売り上げ競争があるわけです。「売り上げ競争しなければならないから『お前、今日おでん10個買ってくれ』」とか「今日30個だ」とか「今日20個だ」というようことで、ずうっとアルバイトの学生に余計な『おでん』を買わせるんです。その代金を賃金から天引きするわけです。こういうことをやってる。
 また、その企業は、時給の学生アルバイトに対して「30分未満の残業に対しては残業代を払う必要はないんだから」と言って、「30分未満まで切捨てだ」と言って29分50秒くらいまで働かせるんです。店長が時計見ながら「まだ大丈夫、まだ大丈夫」と言って、29分50秒やって「もう変われ」と言うわけです。でもこれは労基法的に言えば大嘘ですから、30分未満切捨てなんて労基法に書いてありませんで、そういうことを平気でやってるわけです。
 学生たちはそういうとこでアルバイトをするなかで、「物は買わされるものだ」あるいは「残業代というのは余り払われないものだ」ということをすごく体験するわけです。「企業というのはこういうもんだ」と、そこで親和性を持つわけです。 でも、「それは違うんだよ」ということを、やはり、組合なり学校の教育現場なり、さまざまなところで知識として入れていく必要があると思っています。 時間もあるのようなのでここでおしまいにしますが、内定者の待機者、これから就活する方、あるいはその親御さんも含めて、ブラック企業を増やさないためにどうするばいいのか、ということについては後でまたしゃべりたいと思います。


中島
  京都府立大学の中島です。労働法から見たブラック企業ということで、お話をするんですが、今3名の方から聞いた深刻な話で、労働法がどう太刀打ちできるのかなということを考えさせられていました。 少し問題を整理するために、枠組み的な話をしたいんですけれども、それはブラック企業をどう捉えるのかということに関わりがあります。 労働法の分野から見てみると、ブラック企業というのは非常に新しい概念でして、それをどのように位置付けるのか、とか定義するのかということ位から始めなくてはいけません。
 一応、労働者の権利、労働条件を守る仕組みとしては、『労働基準法』のような最低の労働条件を定めた法律というものがあります。それに違反するということは、これは明確にブラック(企業)でしょうね。 しかし、『労働基準法』というのは、そんなに細かい労働条件の細部まで決めているわけではありません。
 もう一つ、『労働安全衛生法』という、これも大事にしなければいけない法律です。これは労働者の働く環境についての最低基準というのも定めていますけれども、それらでも押さえきれないような部分があるわけです。
 そこについては、例えば裁判の積み重ねの中で『判例理論』というものがあります。学者が言っていることがある程度受け入れられて、理屈として使用者の義務というようなものが認められたりしている部分もあります。
 しかし、それ以外は、『労使自治』で決めていくということになっています。労働者と使用者、労働組合と使用者との間で決めていくということなんですね。 だけど労働者一人と会社の間でなにも物事を決めていくというのは、立場が違いますから、会社の一方的な意思が通っていく、と言うことでしょうね。そこについては、労働組合が頑張っていくということが求められていると思います。
 さてブラック企業がやっていることですけれども、先ほど、ちょっと言いましたけれども、サービス残業にしろ、最低賃金違反の賃金であったり、いろんなことが指摘されました。かなりの部分が、労働基準法違反ということになるだろうというように思います。
 労働基準法違反については、それを未然に防ぐ、あるいは、起こったときに直に解決される仕組みとして、『労働基準法』の中に監督機関というものを設けています。これは行政機関で、『労働基準監督署』であり、そこで働いている『労働基準監督官』です。
 一つは、ここ(労働基準監督署)をもっと本来の役割りを果たしてもらえるようにしていく必要があるだろう、というように思っております。 (労働基準)監督官の人数は、大体3000人位と厚生労働省の発表です。しかしながら3000人の中には、1000人から1500人くらいは管理的業務だけをやっている人もいるということで、実質は、1500人、実質と言いますのは、企業を廻って労基法違反があるかを調べる、『臨検』と言うんですが、そういうことで動ける人は1500人から2000人位ということです。
 日本の民間で働いている労働者は大体5000万人強位居ると思います。そうすると、(労働基準)監督官一人当たり3万人位の労働者を見るということになるのかなと思います。
 『ILO』という『国際労働機関』というのがあるんですけど、『ILO』の基準では、(労働基準)監督官一人当たり1万人という基準を出していますので、それの3倍の人を見なければならない、と言うことになっているんです。
 この間、(労働基準)監督官の数も減らし、監督行政についての予算も減らしてきたというのが国のやっていることです。
 ここを、逆の方向で、(労働基準)監督官の人の数を増やす、(監督行政機関)の予算を付けていく、いうようにすることが必要だというように思っています。
 それから、明確に労働基準法違反だといえない部分でも、いろんな理論で、それなりに労働法は作ってきました。 『メンタルヘルスの問題』が出ています、それから『課題なノルマを課す』というようなことがありますが、理屈としては、使用者の方には労働者の生命・安全・健康を維持する『安全配慮義務』があるんだ、ということであります。 そのことを確認をして来ています。その上でマニュアルだとか指針みたいなものも作ってやってきた。一部については、労働安全衛生法なんかにも取り入れてきた、というようなことがあるんです。
 ところが、今、お話を聞いていると『課題なノルマを課す』それから『パワハラ・いじめをする』それで精神的障害に追い込み、また、自ら退職を申し出るようにさせていく、というこの新手の手法に対して有効な、例えば『安全配慮義務』などを根拠にして、どこまで言えるのか、とかノルマ規制でどんな事を言えるのか、これはもう正直申し上げて、情けないですけど決定打的なことは持っていません。ここになったら、もう「これから頑張ります」という、決意表明をするしかないみたいなことになってしまいますが、決意表明はしておきたいと思うんですが、そういうところは煮詰めていく必要があるだろうと思ってます。
 ただ、ブラック企業の中には、「我々は労基法違反はしていない。なぜ、ブラックって一体なんなんだ。労基法違反企業と呼べ。そしたらうちはそこからそうではない。」と言ってるようなところがたくさんありますが、これもよく実態をつめてみないといけないと思っております。
 例えば、労働時間についてみると、かなりのところは、そうは言っていても自分勝手な運用で、先ほど『名ばかり管理職』の話が出ましたけれど労基法違反行っているところもたくさんあるだろう、というように思います。 それから、そもそも労基法も労働時間の基準そのものを変えていかないといけません。例えば、ヨーロッパでは、1日の労働から次の労働まで11時間は空けるんだ、というようなことをですね、EU諸国全体でやっていこうということになっているんです。
 そうなると、かなりものを規制しなければいけませんけど、だいぶ労働者も冷静にマインドコントロールにあわずに、いろいろ考えられる時間を、組合に相談に行ける時間、組合活動できる時間ができてくるだろうと思うんです。だいぶ様子が変わるのではと思います。
 
パネルディスカッション「ブラック企業の見分け方」