『アイシールド21/19巻ジュリちゃんカラー記念☆カバー裏の一輝の言葉はヒル受オンリー参加サークル皆様に捧げたい『死んでも新刊落とすんじゃねえぇ!』ってそんな事言われてもセナじゃないしー?とほざきつつムサヒルな番外編の台詞を更にムサヒルってみようってジュリちゃん関係なくないですかの巻』↑仮タイトルのまま決まっておりません。
東京大会を終え、関東大会出場を果たした泥門デビルバッツのメンバーは、次の大会が始まるまでの間の束の間の休息を楽しんでいた。と、思われる。ヒル魔、栗田、武蔵の3人が揃って出掛ける事など武蔵が高校を去ってからはなかった事で、3人が3人とも遠足前日のような楽しみな気持ちと僅かな緊張を抱えてこの日を迎えたのだった。なんせフィールドで3人が揃う事を3人がそれぞれの気持ちで諦めきれずに1万3千297時間と49分待ったのだ。学校よりも先にフィールドへ復帰した武蔵はもちろんその後学校にも戻ったわけだが、その見かけと同様、しっかりがっちりとした成績を残していたのとヒル魔の暗躍で特に授業に対する遅れがどう、というわけもなく、それなりの日々を過ごしていた。
しかし、工務店の後処理(一応、棟梁代理であったのだからして)としての仕事に休日を取られ、そういった状況の武蔵に残るふたりが無理を言う筈もなく(言いそうなのが1名居るが、相手が武蔵なので言わないだけだ)やっと以前のように3人で休日を過ごせる、というこの日。逢うなり行き先も告げずに先を歩くヒル魔、というのはいつもの事で、その後をついて来た栗田と武蔵が着いた場所は理髪店だった。
何故か不機嫌そうな顔をしたままのヒル魔、というのはもう普通の事で、傍から不機嫌そうに見えても本当のところはどうなのか、なんて事ぐらい、ふたりには解る。久しぶりに3人揃って嬉しい気持ちはヒル魔も同じなのだ、という事も、もちろん解っている事だ。だから街をブラつくでもなく、誰かの家に上がり込むでもなく、ずんずん歩いて行くヒル魔には、何か見せたいものがある、とか、連れて行きたい場所がある、とか、そういう時なんだ、という事も解っていた。しかし何がどうして理髪店?
店に入ると独特なヘアスタイルの店員に迎えられる。大人しく控えてはいるが、ヒル魔を怖がっている様子もない。その店員の前に栗田を従えた形でふんぞり返っているヒル魔が言った。
「テメーがとっとと戻ってりゃ、東京大会もっと余裕で勝てたんだよ。責任取りやがれこの糞ジジイ!」
「で、なんで床屋なんだ…」
武蔵の疑問はもっともだろう。しかしそんな事を気にするヒル魔ではない。だいたいそんな事を気にしていたらヒル魔ではない。
「責任取って、頭丸めやがれ!…てなとこだが…」
ヒル魔が言い終わらないうちに武蔵は椅子に座らされ、鏡と向き合っていた。
「ケケケ。テメーの顔は都合良くゴツいんだよ。髪型なんざで少しでも敵ビビらしたら儲けもんじゃねーか!」
(…こいつは既に俺の髪をどうするか、なんて事は決定してんだな)
武蔵は大人しく諦めた。
(言ってどうにかなるもんじゃなし、だいたい髪なんざどーでもいいしな…)
昔からフケた外見とはいえ親から貰ったありがたい身体、特に不満もなければ、それをどう見せようか、見られたいか、などと考えた事はない…早い話がお洒落にさほどの興味を持ち合わせていない武蔵だったので、ふたりに散々遊ばれた後、モヒカンへと落ち着いたのだった。
その後3人で悪目立ちしながらも本人達が気にする様子もなく、寄り道しながら帰途に着く。方向の違う栗田と別れてさて、ふたりきり。そうは見えなくても恋人どうし、しかも1万3千297時間と49分プラスαぶりのふたりきり。内心どきどきしているのは、ふたり一緒だったりする訳で。でもって、それを表に出さずにいつも通りにしているのも、ふたり一緒だったりする訳で。こういう時に何事もないかのような表情でどこまでもマイペースなのが武蔵だったりするので、ヒル魔が苦々しいやら嬉しいのやら照れくさいのやらでペースを崩されるのも、いつもの事だった。そう、いつもの。
しかし1万3千297時間と49分プラスαぶりのヒル魔は、それを失念していた。
「…ンだよ」
気付けば武蔵が、じ…っとヒル魔を見ている。
「今頃ソレに文句言っても無駄だぞ?解ってンな?」
髪型の事で、今更言われても困る。笑う為にした筈のモヒカン武蔵の仕上がりを見て、ヒル魔は『ちょっとかっこいいかも…』などと思ってしまって、気に入っていたりするのだ。※ヒル魔さんの美的センスの責任は作者にありません。
なので、殊更不機嫌そうに、睨みつけながら言ったヒル魔だったが、そんな視線などとっくの昔に耐性が付き切っていて、場合によっては『ちょっとかわいいかも、な…』などと思ってしまって、気に入っていたりするのだ、武蔵は。※武蔵の腐女子センスの責任は作者にありません。
それはともかく、ヒル魔が睨んでも、黙ったままヒル魔を見ている武蔵に、居心地が悪くなるヒル魔だったが、あいにくとふたりきりだ。都合良く周囲に人も居ない。お約束だ。
沈黙にたまりかねたヒル魔が何か言おうとした時、武蔵が口を開いた。
「…いや、な…コレ、な…ほんとに敵がビビるか、と思ったんで、な」
「び、ビビるに決まってンだろ!テメーのそのフケ面にその髪だ!あたり前じゃねーか!」
フケ面の高校生など、いくらでも居る。その面に相応しい体格のものも、スポーツをしている者の中には珍しくもない。この程度で、果たして本当に効果があるのか、というのが武蔵の疑問であり、『まあ、効果なんざなくとも、こいつが楽しそうだからいいけどな』というのが武蔵の結論なのだが。
「…おまえのコレも、それを狙って、ってやつなのか?」
「な…ッ…ばっ…」
武蔵が、ヒル魔の逆立てた髪に指を滑らせたのが突然で、ヒル魔が慌てる。しかし、そんな事はおかまいなしで何事もないかのように以下略な武蔵は真顔で言葉を続けるのが、いつものパターンだ。
「いや、だってな、おまえ…結構、綺麗な顔してんのに、何だってそんな頭にしてんだか、って思ってたんだよな…せっかく綺麗な顔してんなら、わざわざンなのにしてなくたっていいじゃねぇか、とか、な。でもまあ、そういう事なら納得出来るな、と、だな」
「何恥ずかしい事言ってんだ糞ジジイっ!俺がき……ッ…」
慣れない言葉を間近で真顔で言われて、ヒル魔はキレた。キレたヒル魔がマシンガンの如く悪口雑言を吐き出すのが普通なのだが、『綺麗』が言えずに固まっている、という事は武蔵ですら気づいていない。武蔵だから気付かないのかも知れないが。※武蔵に対する悪意はありません。
「だって、勿体無いじゃねぇか。何で隠すんだかなあ、って思ってな。でもおまえ、髪降ろしたら怖いって言うよりなんか…可愛い系?か?なんか、そんなカンジ…っ…痛ぇな何すんだヒル魔!」
ヒル魔の髪に指を遊ばせたまま、間近で真顔でひとり喋っていた武蔵に耐えられず、かと言って何をどう言えばいいのかも半ばフリーズした頭では考えられなくなっていたヒル魔は、『出掛ける時も、忘れずに』な各種携帯小型武器でもって、力任せに殴る、という行動に出たのだった。
「テメーが真顔で恥ずかしい事言いくさるからだこの糞モヒジジイ!」
「何がそんなに恥ずかしいんだ?」
本気で解っていない顔で聞いてくる武蔵に、より一層の怒りを重ねるヒル魔だが、相手は本気で解っていないのだ。きょとん?としていても見かけが見かけだけに、そしてそれが武蔵なだけに、表情の変化を読み取るのは難しいが、そこは何せ恋人どうし。その上そういった洞察にかけては武蔵など到底及ばないヒル魔であるから、本気できょとん?としているのが解りすぎるほど解ってしまうのだ。そしてそういう時の武蔵は、何がどうなのかを解るまで聞いてくるタイプで、場合によっては物凄く性質が悪い追い詰め方をしてくる、という事も。何せ本気で解ってないのだから。
「なあヒル魔、だから何が…」
案の定、しつこく聞いてくる武蔵に、ヒル魔は脱力しつつ向き直り、その口を塞いだ。
唐突なヒル魔からのキスに、武蔵は驚きつつも、しっかり応える。幸い人も居なければ通る気配もないままという、街中の筈なのに車もなければ通行人のひとりもいないのかと突っ込みたくなる片倉某の漫画の背景のような都合良さだがそんな事を気にするなど、その眼にお互いしか映していない恋人どうしにとっては今更だ。
お互いにだけ聞える小さな水音が、少し粘ったものに変わって行くのにそう、時間はかからなかった。何せ1万3千297時間と49分プラスαぶりのキス。盛りのついているであろう年代の青少年にしては、ふたりとも良く我慢したものだ。思う存分やっちゃってくれて構わないよ、兄ちゃん達、と近所のおばちゃん口調で馴れ馴れしくぽむ、と肩を叩いてやりたい気分でイッパイだ。
武蔵の片手はヒル魔の身体を支え、片手は髪を撫で耳から頬、うなじを辿り、そのままヒル魔を両手で抱きしめようとした瞬間、ヒル魔が身体を離した。
目元や口の端に微かにキスの名残を残して、少し髪が乱れたヒル魔を、武蔵はやはり、綺麗だと思う。
抱きしめ損ねて不恰好な形で残る腕を元に戻すのも忘れて見蕩れるほどに。
「…なんつー格好してんだ、糞モヒジジイ。ケケケ」
「いや、おまえ、やっぱり綺麗だと、思うぞ。俺は」
まだ言うか、と思いつつ、武蔵に言われるとむずがゆい感じがしながらも、嫌ではない自分に気付いたヒル魔は、文句を言う代わりに武蔵に『解るように』言った。
「こーゆーのは、テメーだけが知ってりゃいいんだ、っつの…」
ヒル魔の言う『こーゆーの』には、恥ずかしくて顔を赤らめるヒル魔、とか、立てた髪が乱れたり降ろしたりする状況のヒル魔、とか、とにかく『武蔵とふたりだけ』の時の諸々が入っていて、そしてそれは武蔵にも正確に『解った』らしかった。
今、ヒル魔が照れくさい台詞を吐いた自分が恥ずかしいらしいのも、耳の端が微かに赤味を帯びている事で解ったし、1万3千297時間と49分プラスαぶりのキスで煽られた身体はたぶん自分だけじゃない事も抱きしめ損ねて解ったし、いくら人がいなかろうが往来でその先まで、というのは勘弁して欲しいのも解った武蔵は、早いところ自分が思うところの綺麗なヒル魔、というやつが見たくて仕方がなかった。
「このまま、おまえん家行っていいか」
「……おう…」
いちいち聞くな、と言えば、また的外れな事を延々言い出すに違いないぞこいつは、と思ったヒル魔は、それでもこいつにしては上出来か、などと思いながら小さく返事をした。
END 2006.06.03.
思ったより長くなっちゃいました、よ…。誰に頼まれたわけでもないのに自らムサヒルを書いているオノレにごっつい驚きを感じております。これ、タイトル付けたらSSページにこのままUPしよ…。<ということで、覚書内に書いていたものですが、お題にUPするまでは、DLフリーですんで持ってく方がいらしたらお好きにどうぞー、と書いていたものです。そのおかげで良い出逢いもございましたので、書いてみるものですね…。びっくり…。