「大魔神仏峠」
金剛阿含くんは、御仏の寺の小坊主(プリンス)!
修行のために一般人間界にやって来たんだv
ちょっぴり鬼畜で腹黒くて
食物連鎖の頂点から 草食動物を見くだすような
氷の瞳の阿含くん★
怒らせてはいけないぞ!
物凄い肉体言語(サブミッション)が炸裂だv
「阿含のテーマ」
あああ〜 ごごご〜 マジカル まじ狩る? 小坊主(プリンス)〜
仏の寺からやって来た ちょっとcold-bloodな王子様v
みんなの恨みを 魔法の錫杖に込めて
今こそ放て御仏の力!
(セリフ)「左舷後方、敵影確認!」「かかったな、成敗成仏諸行無常色即是空ッ!!!!」
懺滅 撃滅 粛滅 圧勝!
人の 命の 終わりを見せる〜
あああ〜 ごごご〜 小坊主(プリンス)〜(O H!)阿含〜
「阿含、よく聞くのじゃ。おまえは今日から一年間、寺の外で一般人達と暮らすのだ。それが、大僧正を引き継ぐ、おまえの役目の為の、試練なのじゃからな」
「はいはーい、っと。ま、行った先の学校掌握してくりゃあ、文句ねえんだろ?じーさん」
何の脈絡も前振りもなく始まるこの物語は、『マジカル血煙コミック 大和田秀樹「大魔法峠」角川書店発行』のパロディっつーか、まんま、阿含でこれ、見たいだけだし深いツッコミなんていらねえよ、パクリなんだしよ、所詮。堂々と言ってるだろーが、あァ?!さりげなーくパクってオノレのオリジナルぶってるよりゃあ、マシだろーが、うだうだ言うな、という作者が設定知りたきゃ原作買ってくれ、と勝手に進める魔法少女モノ漫画阿含バージョン(女体ではないし少女でもないが)であり、嫌なら即ブラウザバック推奨、のお話である。原作にやおいは存在しないが、それは勝手なオプションなので軽く流して頂きたい。
ヒル魔さんで魔法少女モノを書くのも萌えだが、これを書いている今の作者の気分が懺滅 撃滅 粛滅 ついでに滅殺〜vDNAひとかけら残さず逝くが良くてよ〜vあなたもワタクシをそうお思い?あら、両思い?嬉しくないわね、お互い、ねv(<ここで握手)大丈夫、実質的な被害を及ぼす気など、毛頭ございませんことよ?そんな力など、持ち合わせがございませんもの〜vそれではごめんあそばせv(<にこやかに手を振りつつ去る)状態なので、阿含なだけだ。苦情はいらぬ。我君愛阿含。<どこの言語だか、知らない。
「神龍寺から賊徒学園に転校してきた、金剛阿含でーす。よろしくー」
転校生として挨拶をした阿含。明るく挨拶してみても、その見てくれと言葉との裏腹加減が拭えないクラスメイトの反応は、落ち着かないものだった。
(ああ、なんて澄み切った空。寺の外、ってのは、こんなにも開放感が溢れているもんか。空が綺麗、だなんて俺でも思う程度に。…気に入ったぜ)
(阿含くん…邪気ありまくりで、怖いなァ…)(何考えているのかなァ…)
指示された窓際の席に着き、空を見上げながら怪しげな笑みを口元に刷く阿含を、遠巻きに見つめるクラスメイト。阿含がその時考えていたのは、以下である。
(この美しい森も大地も空も寺の外の人間どもも…即位したらぜーんぶ、俺のものなんだなー。学校掌握も、このぶんじゃあ、チョロいだろーなー。ま、いーか、それはそれで)
この学園を仕切るのは、どうやらアメフトというスポーツをしている人間達の、リーダーらしい。組織を手っ取り早く掌握するなら、頭を潰せば良いだけの事。簡単すぎる。これでも試練か。ナメてんのか、糞ジジイが。俺が人心掌握の懐柔策を練るとでも?んな、面倒な事しなくても、力で支配してしまえばいいだけの話じゃねぇか。自分と自分が大切にしているモノさえ守られていりゃあ、他はどうでも良いだろ、皆?恐怖の中で綺麗事を、どこまで通せる?恐怖と痛みに耐えられても、快楽はどうだ?大抵、どっちかに屈するもんなんだよ。人間、ってぇのはな。苦痛のあまりに堕ちても同情されるが、快楽に堕ちれば罵られる、ってだけの違いだろ?
脳内でジジイを罵りつつ、アメフト部の部室のドアを、蹴り破る。
「何だ、テメエ…?!」
「このガッコ、仕切ってるヤツの首、貰いに来てみたんだけどねー?どれが、そーなのかなァ?」
「首貰いに、だってよ!あひゃひゃひゃひゃ!!バカなヤツもいたもんだぜ!!!」
「ここには、おめーの手に負える奴はいねーよ!!」
「どっかの坊っちゃん学校と間違えてねーか?ここは俺達みたいなのしか、いねェよ」
部員らしき連中が、嘲笑う。静かに歩を進めた阿含が、その中のひとりの腕を、取った。ぎり、と片手で締め上げる。腕を取られた男の口から、悲鳴が漏れた。
「勘違いするな。お前ら下衆に用はない」
「放せッ!!!折れるってんだよ!!」
腕を掴まれた男は、抵抗をやめない。
「放さねェとどんな目に合うか…うっ…!!!」
阿含の片手に締め上げられたまま、抵抗を続けていた男の腕が、妙な音を立てた、次の瞬間、ありえない方向に曲がった腕を垂らし、気絶していた。
「折ったぞ。さあ、どんな目に合わせてくれる?」
氷のような、という形容がふさわしい、温度を下げたとしか思えない瞳の色と、微笑の形の口元。阿含がこの状況を楽しんでいるのは、明らかだ。こういう場面には慣れているはずの部員達も、気圧され気味だった。それでも、意地がある。
「この…ッ…!!」
「よせ」
何とか反撃に出ようと…ひとりの阿含に、その場の全員で、というあたりで力のなさを認めたようなものだが…した部員達へかけられた制止の声に、今にも阿含への反撃に出ようとしていた連中が、振り返る。
「お前らのかなう相手じゃねェよ」
「ルイさん!!」「葉柱の兄貴ィ!!」
白い長ランをはためかせ、部室へ入ってきた男の名を口々に呼ぶ部員達の顔は、自分達の非力さを、この人物ならばどうにかしてくれるだろう、という都合の良い期待に満ち溢れていた。
「てめぇが、ここの頭か。葉柱、ルイ…その名前、神龍寺にも届いているぞ。人間とは思えねぇ、長い手足と舌を持つ、珍しい人間として、な。まーんま、爬虫類、から取っただろ、その名前」
面白そうに、阿含が笑う。
「ルイさん!!62番の腕が!!」
「どけよ」
駆け寄る部員を振りほどき、葉柱が阿含と対峙する。
「我がマスコットとなれ、葉柱。後の栄達は思うがままだぜ?」
「人を使っても、使われるのは性にあわなくて、な。ま、四の五の言っても始まらねェ…マスコットにしたいだの、頭張りたいだの、ってんなら、俺を倒しな。それが、ここ、賊学での掟だ」
言いながら、ギン!と気合の入った目で睨みつける。
「望むところ!!!」
答えと同時に、阿含が構える。
「ぬぅ…その構えもしや…」
「金剛小坊主(プリンス)拳!!!」
「そうか…貴様人外かッ!!!」
相手が人外では肉弾戦は不利…ならば…悪魔の力を借りるまで、だ。
悪魔。葉柱にとってのそれは、泥門高校のヒル魔妖一だ。奴隷として日々、働く事を条件に、一度きりの『お願い』を聞いてもらえる契約だった。悪魔との取引、というヤツだ。人に使われるのは性に合わない葉柱も、悪魔に使われるのは構わないらしい。
携帯をかざし、ヒル魔に教えられた印を結ぶ。こんなもんで、ほんとに来るのかどうか、知らない。が、試してみる。
「悪魔の真のおそろしさを教えてやる…ッ!!コイツの魂をくらいつくせ!!!」
契約によって呼び出されたヒル魔は、どういう経路でかすでに阿含の前に現れていたが、葉柱の『お願い』を叶えようと動く気配など微塵もない。
「ゴルァ!!何してんだ!!悪魔だ、ってのがほんとなら、とりあえず取り憑くなり何なり、しろよっ!!」
葉柱が、焦って叫ぶ。力のある者は、同じく力のある者を見抜く。葉柱は、阿含の力が自分より上だと、対峙した瞬間に理解した。だからこそ、悪魔との契約履行に踏み切ったのだ。早いところ、カタを付けて欲しいと願うのも、無理はない。爬虫類じみていても、人間だ。人外と悪魔の闘い方など、知らないし、知りたいとも思わない。勝手に共倒れになってくれれば、平穏な生活が戻ってくる。それだけの事だ。
「あー…無理。取り憑く、ったって、常人なら既に死んじまってるだろうクラスの怨霊どもが、たーんまり、憑いてやがるしな。今更、俺ひとりが憑いてみたところで、コイツには何のダメージもねえよ。どんな悪どいことすりゃあ、そんだけの恨みを買えるんだか、こっちが聞きてぇぐらいだな」
やる気の欠片もない声で、葉柱に答えつつ、阿含に問いかけるヒル魔だった。
「バカか。人の恨みを背負ってやる覚悟もなくて、坊主が務まるか。…で?もう、オシマイ?俺を倒す手立ては、もうねェのかよ?…だったら、行くぜ…ッ!!!」
阿含が、動いた。
「小坊主(プリンス)蠍固め(スコーピオン・デス・ロック)!!!」
固められたはずの片足を利用して、残された片足で反動をつけた葉柱が、決まったはずの技から抜け出し、阿含の脇に身体ごと叩き入れる。衝撃は強く、鈍い音と共に、口から血を吐き出した阿含が膝を就く。
(肋骨2本、ってとこか…ま、これぐらいの手応えが、なくちゃあ…なァ…)
膝を就いた阿含を見下し、葉柱が言った。
「悪いな。俺は特異体質でね。体中の関節が360度動く…つまり、関節技(サブミッション)は効かねえんだよ」
これで勝負は終わりだ、とばかりに白い長ランを翻らせ、去ろうとする葉柱を、逃す阿含ではない。
「ますます気に入った、ぜ…。我が下僕にふさわしい、な」
「…死にたいか、小坊主」
「フッ…神龍寺の者にとっては死も敗北も…同じ事!!!小坊主(プリンス)ヘッドロック!!!」
隙を見せない葉柱の背後から、技をかける。
「やれやれ…どんな技で来るかと思えばヘッドロックか…何とも平凡な技で失望したぜ」
心底呆れた、という表情で言う葉柱は、身動きひとつ、していない。できない、という訳ではない。していない、のだ。
「ヘッドロックが平凡だァ…?フッ…おめでたい爬虫類だなァ…?」
「何?…ぐはァ!!?ぐギャアアア!!!」
叫びながら、ロックされた頭以外は自由な葉柱が、長い手足をばたつかせる。
「バ…バカな!!?ルイさんが苦しんでる!!?」
「ありえねェ!!頭突きで岩を砕ける、ラインもこじ開ける石頭なのに!」
ふたりの闘いを見守っているといえば聞こえはいいが、見ているしか術を持たない部員達が、騒ぐ。
「少しは勉強しておけよ…頭蓋骨にも継ぎ目…つまり関節ってのが、あんだぜ?ヘッドロックってなァ、その関節を使って脳を直接攻撃する、恐るべき関節技(サブミッション)ってワケだ!!!」
(まるで頭の中を鷲掴みにされているようだッ!!!)
見る間に顔色が変わり、嫌な汗が流れ落ち、気を失いそうになりながら、それでも葉柱は抵抗を続ける。そんな葉柱の抵抗を嘲笑うかのように、ロックされた頭の関節は締付けられ、意識を手放しそうになる。
「関節技(サブミッション)は王者の技。決められぬ関節など、ねえ…ッ!!!」
小坊主のクセにキリスト教徒のごとく強固に作った腕十字の力を最大限に込めた阿含の腕の中、果てた葉柱が床に放り投げれれる。
「うわああ!!ルイさんがやられたァッ!!!!」
「俺達がかなうわけがねェ、逃げろォ!!!」
見る間に散っていった部員達。放り投げられ、床に叩きつけられた体を、何とか起こそうとする葉柱だったが、痙攣を起こして立ちあがる事が出来ずに呻くだけだ。
「あッ…ウっ…」
「あーあ。また殺(や)っちゃったなー。さあ、約束だ。俺様のマスコットに、なりな」
「後悔、するぜ…寝る時…メシを食う時…お前に心安まる時は二度と来ェぞ…必ず殺してやるからな…」
這いつくばりながら、自由になる目だけに、残された力のすべてを憎悪に変えた葉柱が、阿含を睨みつける。
「くっ…くっくっくっ…あーっはっはっはっはっ…!」
「な…何がおかしいッ!!?」
激昂する葉柱に、穏やかとも言える笑みを浮かべた阿含が視線を合わせる。どこか、悟ったような表情、とでもいうのだろうか。
「命を狙う下っ端坊主だの庶民だの奴隷だの悪霊だのの一人や二人、御せずして坊主の頂点、大僧正と言えるかよ」
穏やかながらも漢らしいとしか言えない笑みの阿含に、そういう漢の世界に浸かりきっている葉柱は、目を奪われそうになる。
「カッ…変わった小坊主さん(王子様)だぜ…マスコット契約書を出しな」
到底そんなものを持ち歩くとは思えない阿含だが、こういう理屈で逃げる輩を予測してか、持ち歩いているらしい書類を差し出される。
観念した葉柱は、指を噛み切り、流れ出た血で判を押した。
「その命の炎燃え尽きる時まで、我が身に忠誠を誓え」
「…負けたもんは、しょーがねぇ…マスコットとやらが、どんなだか知らねェけど、それだけなら、てめぇの言う事聞くしか、なさそうだしな。忠誠とやらは、誓えねぇが、よ」
「…ほぉ…ここまでされて、まだ、そういう事言うんだ?」
往生際の悪さに腹を立てた阿含が、なおも葉柱を痛めつけようと近づく。
「悪ィが…忠誠なら、ソイツに…そっちの悪魔に、誓ってるもんだからよ」
二人で少年誌青年誌男の友情ドラマじみた展開を繰り広げていたが、ここにはまだ、しっかりヒル魔が残っているのだった。
「つまり、アイツを倒せば、アイツごとお前も、俺のもん、ってワケだ…?」
にたり、と笑った阿含は、静かに印を結ぶ。
「いでよ、錫杖!リリカル・トカレフ・キル・ゼム・オール!龍神達よ、俺様に力を!」
「頼む、見逃してくれ!」
がつ、と鈍い音をした方に目をやれば、ヒル魔が勢い良く額を床にぶつけながら擦りつけ、土下座をしていた。
「呼び出されたから来たものの、てめぇに手は出してねぇだろ?!」
自分の身が危機に晒されようとしているのを感じたヒル魔が、無様にも錫杖を呼び出した阿含の足に縋りつく。
「ヒル魔…っ、お前…何、を…っ」
葉柱は、驚愕する。あれほどまでに傍若無人なヒル魔が、自分を奴隷と呼んで憚らず、好き勝手に使うヒル魔が、自ら相手に膝を就くどころか、土下座をしている。信じられるものでは、なかった。
脅迫手帳を持ち歩き、悪魔としての力の行使も厭わないヒル魔にしてみれば、それなりに修羅場も経験している。土下座ひとつで事が済むなら、いくらでも出来る。プライドでメシが食えるか。報復ならば、時期を狙わなければいかない。相手が頂点に昇りつめた時点で叩き落してこそ、最大の効果が見込めるというものだ。背水の陣、というのは力が拮抗している相手になら効果的だが、差がある場合のそれは無謀、としか言えない。這いつくばるぐらいで砕けるような、安いプライドならば、持たない方がマシだ。
「へえ…てめェ、相当の修羅場をくぐり抜けてきてるな、その態度。だがなァ…俺に土下座なんざ、したって無駄だ!教えてやるぜ…人間と同じく、悪魔だろうが怨霊だろうが…どんな種族だろうが、ニ種類しかいねェんだぜ…?支配される愚民衆と…君臨する覇王だ!!!!」
ヒル魔が土下座、というだけで、浮かれたり虚を突かれたりで、それ以上の報復を受けてきた相手とは、違う。阿含には、通じなかった。
「て…めえ…何者だ…?」
ただの小坊主では、ない。ヒル魔の問いに、嘘くさい笑顔全開の阿含が答える。
「ウフ。俺様は阿含v神龍寺からやってきた、ちょっぴりおシャマな小坊主(プリンス)よvきゅんv」
「ざ、けん、な…っ。まだ、騙る気か…っ!!!」
「小坊主(プリンス)小手拉(こてひしぎ)!!!」
阿含の手が、ヒル魔の腕をロックする。
「逃げられねェよ。俺の力だけじゃなくて、龍神達が居るからな。俺に憑いてる怨霊にすら、太刀打ちできねぇ悪魔ごときに、どうこうできる状態じゃあ、ねぇよ」
「どう、する、ってんだ…俺、を…」
ろくに動けない状態のヒル魔を抱き寄せ、頬に手を添えて顔を近づける。
「お前は大切なマスコットのご主人様らしいからな…悪いようには、しねぇよ…」
「くっ…」
「寺っつーのは、尼寺でもねぇ限り、女人禁制とかヌカしやがるわ、禁欲だ節制だって、うるせぇんだよなー」
「嬲る(ヤる)気かよ…ッ…糞…ッ…ケルベロス…ッ!」
どこからともなく現れた犬が、錫杖を噛み砕く。これで、龍神の力は使えなくなるはずだ。だが、ヒル魔の読みは、甘かった。
「小坊主錫杖(プリンス・ロッド)が使えねぇ…となれば、龍神の力は使えねェのは、ご推察のとおり、なんだがよ…だったら、肉体言語で語るまで、だ!」
「ヒル魔ァ…ッ!」
王者の関節技(サブミッション)を、身を持って知った葉柱が、叫ぶ。だが、阿含言うところの肉体言語とは、葉柱の危惧する関節技(サブミッション)ではなく、ヒル魔が危惧したとおりのもの、だった。
荒い息遣いと、絡み合う身体。目の前で展開されるそれから目を背けたくても、身体が動かない葉柱には、見ているしかない。目を閉じれば良い、と思って閉ざしてみれば、五感のひとつを閉ざす為に必要以上に鋭くなる聴覚や嗅覚が、余計な想像を掻き立て、身体が反応する。
憑き殺そうにも阿含に憑いた怨霊の数が尋常ではなく、阿含から与えられる快楽に溺れている今のヒル魔に、そんな余裕など、どこにもない。
「す、げえ、な…悪魔、ってのは…」
心底感心した口調と、バカにしたような表情で阿含が言う。
快楽に流されまいとする人間を誘惑し、堕とすのが、悪魔だ。天使のように神々しくはなく、どこまでも淫猥に、欲望に流される事を誘うのが、悪魔だ。欲望のままに流されれば、堕ちたまま破滅する事を恐れ、神や仏という人間以上の存在を信じ、人としての道を外れる事なく生きようとする人間を、欲望に導き、堕とし、欲にまみれた望みをひとつだけ叶えると同時に、命を奪う。人を誘う悪魔。慈悲に満ち溢れていては、いけない。優しくても、いけない。誘惑され、破滅しても良い、と思えるほどに、妖しく、美しく。そして、禍禍しく。恐怖と妖しさを併せ持ち、苦痛を嫌い、快楽を好む。快楽を拒否し、苦痛に耐える事で精神を高めようとする人間を、堕として命を永らえる。
御仏の教えでは、悪鬼は存在しても悪魔は存在しない。(か、どうかは、詳しく知らない作者なので、居たら教えてくだされ…)
手始めに、学校ひとつ。その次は、街を。そして、国を。いずれは、星を。手に入れようとするならば、異教だというだけで排除しては、話にならない。敵とみなすのであれば、なおさら、敵こそを知れ、だ。神や天使、その弟子よりも、悪魔を面白いと思い、いずれ会えるだろうとは思っていた阿含だったが、こんなに早く、目の前に現れるとは思っていなかった。
相手が人間ならば、とうに堕ちているであろう嬌態を晒して、求めてくるヒル魔の姿は、快楽を好み、追い求める悪魔にふさわしかった。
(人外と悪魔、っつっても、ヤるこた、人間と変わらねェもんなんだな…)
目を閉じる事も、逸らす事もできないまま、床に転がった状態でふたりを見ている葉柱は、そんな事を考える。
(つか、人目を気にしろよ、ちったぁよ…かんっぜん、に、俺の存在、忘れてんだろっ)
葉柱の心の叫びが、ふたりに届く事はない。
(今なら…阿含の命(タマ)ァ、取れる…ッ)
快楽に溺れている今、なら。
「おい、そこの爬虫類。この状態でも、お前の考えてる事ぐらいは、解るんだぜ…あんまり可愛い事考えてると、お前から葬ってやるぞ?」
葉柱の考えを打ち砕くように、阿含が言う。
「忠誠を誓ったご主人様が、俺に嬲られてんのが、ショックなのかなー?葉柱クンは。何なら、混ざる?俺はいーけど?」
「な…ッ…」
好い様にこき使われて、殺したい奴ナンバーワンのヒル魔とはいえ、何だって言いなりになっているかと言えば、500万が言い訳に過ぎない事ぐらい、自覚はしている葉柱だった。
(混ざる…俺が…?!…阿含と俺で、ヒル魔を…いや、待て待て、ロックかけられて、頭オカシクなってんだ、きっとそうだ、何だって、んな事…やるなら俺ひとりでいやいやそうじゃねェだろ俺!)
「お前のその稚拙な考え、かわいーなー、葉柱クン。言っただろ、考えてる事ぐらい解る、ってな。コイツに忠誠誓って、命懸けて惚れてまーす、ってなお前に、俺が一緒にコイツをヤらせるとでも?まさか、んなこた思ってないよなァ?混ざる、ってんなら、てめぇも俺にヤられんのよ?わかってっかー、そのへん。んー?」
「じょっ…冗談じゃねえ…っ!」
顔色を無くして、葉柱が叫ぶ。
「だったら、そこで大人しく転がってろ。お前の大事なご主人様は、見てのとーり気持ち良くなっちゃってんだから、心配いらねぇだろ」
葉柱の存在など、気にしている様子も…そんな余裕もないのが傍目にもはっきりと解るヒル魔の腕が、脚が、阿含に絡みつき、誘う。
これが、文字どおり悪魔の誘惑の声だとしたら、誘われて堕ちるのも無理はねェな、などと思う事しか、今の葉柱にはできなかった。
ヒル魔の声が絶える事はなく、阿含がやめる気配もない。
(いつまで、続くんだかなー、これ)
葉柱は動けないまま床に転がり、いい加減麻痺してきた思考で、ぼんやりとそんな事を思う。
「…く…う…あ、ぐ…も、やめ…」
今まで漏らしていた嬌声が、苦痛の色を見せ始めたヒル魔に葉柱は目を向ける。対する阿含は、ヒル魔に行為を強いるばかりで、やめる気配は相変わらず、ない。
「は…ッ…ようやく、解ったようだな。悪魔サン…?」
「…うあああああ…ッ」
(何が、起こってるんだ…ヒル魔…ッ?!)
いつまでヤってんだ…と、半ば呆れていた葉柱だったが、ヒル魔の様子が急変したのに、落ち着いてはいられなかった。
「浅はかだねー。悪魔ってのは。快楽に溺れて、溺れる自分に堕とされるヤツの命吸い取ってる程度のこと、解ってんだ。俺とヤって、怨霊の数なり力なりを減らそうとしてたんだろ、おおかた。無・駄・だ・ね!サブミッション四千年の歴史の中では、そんな事態は想定済みなんだ、よ…ッ!!!!!んな、精力吸い取りてぇなら、お望みどおり、吸わせてやるぜ…小坊主(プリンス)三角締め!!」
「ぐ・ふ、ぐう…ん…ッんんん…ッ」
阿含の足でロックされた上半身を動かす事が出来ず、股間に挟まって抑えつけられた形のヒル魔の口の中に容赦なく突っ込まれる阿含の欲望に、抵抗する術を持たないヒル魔は、くぐもった呻き声を漏らすだけだった。
どこからともなく現れ、錫杖を噛み砕いたケルベロスは、どこへともなく消えている。床に転がったままの葉柱には、ヒル魔を助ける事はできない。
(ヒル魔…大人しく、龍神の力を食らった方が、マシだったんじゃあ…えげつねェヤツだな…小坊主…)
葉柱がそう考えると同時に、くたり、と意識を手放したヒル魔を、ようやく解放した阿含が視線を向ける。
(俺の考えてる事、解るんだっけな…)
何を言われるだろう、とそれ以上考えるのをやめた葉柱に、阿含は照れたような笑顔を見せた。
「やりすぎちゃったかナ?てへv」
「てへ、じゃねーべ…」
それ以外に、言葉がなかった。
彼の名前は金剛阿含。
御仏の寺からやって来た小坊主。(プリンス)
一般人間の世界に、一年間の修行に来ているのv
「リリカル・トカレフ・キル・ゼム・オール!」
呪文で龍神の力を得られるの。
それ以外は、ヒ・ミ・ツv
END 2004.07.24.
「形容詞30題」より『 20.どくどくしい』です。阿ルイか阿ヒルかルイヒルか、と、つらつら考えているうちに、どーにもこーにもにっちもさっちも。楽しかったです。勢いだけで書いたものですので、笑って許して和田アキ子なカンジで。冒頭の煽り文句、テーマソング、作中の戦闘シーン(…なのか、あれは)のセリフなどは、ほとんど原作まんま、でございます。もう一度、原作を紹介しておきましょう。
「大魔法峠」マジカル血煙コミック/大和田秀樹/角川書店/540円(税別)
もおね…阿含が好きで、ルイが好きで、でもってヒル魔さんはダントツピン、で好きで、どうしようもなく今、この3人でおばかなモノが、書きたかったんです。ほんま、流して笑っておいてくだされ…。