※ここからは、『鶏インフルエンザに圧勝しなけりゃー、二度とアメリカの土は踏まん』と豪語するアポロ社長で話題の、
テキサスNASA・フライド・チキンズの提供でお送りします。


賊学の不良に、桜庭が絡まれたのが、ヘタレンジャー誕生のきっかけだった。その時の相手が、ここに来るかもしれない、というのが、ヘタレッドこと、セナの持ってきた情報だ。
「尾行してた、って線は、なさそうなんだがな。仕返し、つっても、糞ジャリが手ぇ出した、ってワケでもねぇし…恥かかされた、とか何とか、逆恨みの類か。で、それ口実に、敵が動き出した、ってとこか」
「どう、しますか?ヒル魔さん」
「ここで迎え打つこた、ねぇだろ。都合よく、アシもある事だしな」
作業報告を書き上げたムサシが、やれやれ…と言った表情で、それに答える。
「時間外勤務、だな」
「手当てはしっかり付けてやるから、心配すんな」
「現物支給か?こんなもんまで、校長マネーから出ねえだろうしな」
「ジャリプロマネーだ。契約済みだ。ギャラの一環として、な。抜かりはねぇよ」
「ええっ?!僕、給料制だから、そんなに払えないよ?!」
ヒル魔の事だから、法外な金額を請求される、と思った桜庭の口から思わず出た叫びに、呆れた顔のヒル魔が反論する。
「てめえの給料なんざ、当てにしてねぇ。ミラクルとかゆーヤツとの契約だ。安心しろ」
「…よく、承知したね…ミラクルさん…」
ケケケ、と笑うヒル魔に、桜庭はそれ以上、聞く気になれなかった。
「おい糞チビ。栗田と進、呼び出し。とりあえず、出動だ!変身しろ!」
「え、でも…着替えとかって、どこにあるの?えええっ?!…ヒル魔、それ、ダメぇ〜っ!!」
撮影なんだから、衣装に着替えて出動、という形を取るのだろう、と思っていた桜庭は、前触れもなく変身しつつあるヒル魔の姿に、制止をかける。どういった原理かは知らないが、今しがたまで身につけていた服が姿を消しつつあり、裸体を晒しかけている。ヒル魔の半裸で喜んでいた前歴がある桜庭は、全裸が見られるチャンス!と思うよりも先に、『ヒル魔のこんな姿、むやみやたらと晒したくない〜っ!僕以外の人間にっ!見ないでよっ、みんなっ!つか、僕の知らない所で、そんな姿、晒し続けてたの、ヒル魔あっ?!ひどーいっ!』という、自分勝手な理由をコンマ以下の時間で脳内に駆け巡らせていた。
「変身中に、くっついて来るな!うぜぇ!」
誰にも見せるもんか、とばかりに抱き着いて来る桜庭を引き剥がそうとするヒル魔だが、こんな時だけは必要以上に力を発揮する桜庭を、引き剥がせずにいる。
「あの…事件が起こるかもしれないんですから、早く行かないと…」
もっともな意見でふたりを制止しようとするセナを見れば、しっかり変身していた。前回していたマスクは、していない。
「いつの間に、着替えたの?セナ君」
「変身だ、ってヒル魔さんが言って、変身ポーズ取ると、知らない間にこのかっこに、なっちゃうんですよ。何でだか、僕もよく、わからないんですけど」

説明しよう!形状記憶元素と呼ばれる物質が、必要時に現れ、戦士の身体を包んでレンジャースーツとなるのだ!持ち運びも洗濯も不要、いつでも好きな時にその格好が出来て、不要ならば元に戻れる、便利なスーツ、かさばっても構わないからスーツの形で保存したい貴方の為に、今なら収納ケースが3個付いてくるから、お買い得!のこれは、人間界には、まだ、存在しない。魔界も案外俗っぽいのかも、しれないが、神話の神とて人間と変わらない行動形態のくせに人間を支配していたのだからして、そういう事も、あるだろう。深く考えては、いけない。大人のお約束だ。

「そゆの、ほんとにあるんだ…」
感心しつつも、ヒル魔を離す事なく、桜庭が言う。
「てめぇも、そーなんだよ。隊員だからな。てめぇの変身ポーズは、デビュー曲の決めポーズ決定な」
「ええええっ?!」
思わずヒル魔を離した桜庭の前には、変身済みのヒル魔の姿があった。こちらも、マスクをしていない。
身体にフィットしたスーツ、マスクなしの顔、いつもの桜庭なら、抱き付きたくっているであろう、その姿。しかし、今の桜庭はそれどころでは、なかった。
「決めポーズがそれって…ひどいよ、ヒル魔あ〜っ」
アイドル。それの過酷な試練。常識では考えられない、数年後には見たくもないのに懐かしのVTRで何度も見せ付けられる事になる衣装、べたべたな歌詞と振り付け。仕事だから、と覚悟を決めてこなしてはいるものの、それでファンが喜ぶとはいうものの、本人が喜んでやっているとは、限らない。
「とりあえず、ポーズ取れ。変身しちまえば、生身のまんまよりゃ、衝撃その他、マシになんだからな。それに、これはお仕事だぜ?わかってるよな?桜庭クン?」
「…わかった。デビュー曲の、決めポーズ、だね?」
こんな場面で、こんな間抜けなポーズを取らされるとは思ってもみなかったけれども、これは、仕事だ。ギャラがかかっている。違約金を考えると、下手に拒否して、ミラクル伊藤に説教をくらうのは、ごめんだ。まるで年季待ちの遊女のような考えであるが、何かにつけ契約金、違約金を持ち出すミラクル伊東に知らず知らず洗脳されたのかも、しれなかった。
ここは、ステージ。ドサ回りキャンペーンの舞台よりは、マシ。思いこめば、何とでもなる。
数秒後、変身した桜庭の姿があった。身体にフィットした、ピンクのスーツ。過去、戦隊モノでは女性しか着た事のない色のそれは、桜庭が着た所で違和感を感じさせなかった。さすがはアイドル、と言えよう。どピンクのスーツぐらいでヘコんでいては、アイドル誌のグラビアなど、やってられない。また、似合う人物にしか、そういうものは、許されない。ファンは、我侭で容赦がないのだから。
「んじゃま、敵さんがどのあたりに居るか、探しがてら出動、って事にすっか」
「こっちはいつでもO Kだ。乗り込め」
「おう。適当に、流してりゃいいぜ。賊学だったら、ま、頭は俺の奴隷だし、どうとでもなんだろーしな」
緊張感のかけらもなく、ヒル魔が言う。ヒル魔が率いる泥門デビルバッツと賊学カメレオンズが練習試合をして、負けた賊学がヒル魔の奴隷になった、という話は聞いているけど、それはそれ、これはこれ、じゃないのかなあ…と思った桜庭だったが、ツッコむ勇気は、持ち合わせていなかった。
「デビルバット号、発進!」
どう見てもただのトラックなそれが、ヒル魔の号令と共に発進する。どう見てもただのトラックの、どう見ても単なる荷台に、レンジャー3人が居座っている。教習所では、荷台に人を乗せてはいけないと習うはずだが、気にしていては、戦隊モノだの変身モノだのは、成り立たない。
「これって、何か仕掛けがあったり、するの?」
ヒル魔の事だから、何かあるに違いない、と思った桜庭の、素朴な疑問だった。
「んあ?これか?ねぇよ、そんなもん。アシだ、っつったろーが」
「だって、武器が出て来たりとか、変形合体したりとか、するじゃない、特撮モノの、車ってさ」
「ああ、そーゆー事か。そりゃ、この先、だな。今の手持ちは、こんだけだし」
そんな会話を交わしつつ、ムサシの運転するトラックが走っていると、改造してまーす!と主張しまくった排気音が、近づいて来た。
「あれだろ。葉柱のバイクの音だ」
「葉柱って?」
「賊学頭。俺の奴隷」
バイクの音を聞き分けられるほど、使いたくってるのか…と考えた桜庭は、お気の毒に…と、心の中で、まだ見ぬ賊学頭に手を合わせた。
「奴隷だったらさ、ヒル魔の言う事、何でも聞くんじゃないの?何で、襲ってくるのかな…」
「それを、これから確かめるんだろ」
言うなり、ヒル魔が荷台から飛び降りる。飛び降りた先は、爆音を撒き散らすバイクの群れが迫っている。ヒル魔の様子をミラーで確かめていたのか、タイミングばっちりでトラックを止めていたムサシ。駐車違反にならない場所にきっちり止めるあたりは、職人芸と言えよう。
「ちょ、ヒル魔あっ…」
「大丈夫だよ〜、ヒル魔だからね」
「栗田君?!いつ、ここに?!」
「雁屋にいたんだよ〜。ほら、そこ。シュークリームが、美味しいの。桜庭くんも、食べる?」
しっかり変身しつつ、戦闘とは無縁の笑顔で、シュークリームを頬張っている。
「そんな暢気に食べてる場合じゃ…」
「大丈夫ですよ、桜庭さん。ほら、腹が減っては戦はできぬ、って言うし、栗田さんは、食べないと力が出ないんです。ヒル魔さんも、それ、知ってますから、何も言いません。あ、栗田さん、進さんに、会いませんでしたか?」
セナが、フォローを入れつつ、もうひとりのメンバーの事を聞く。
「僕は、ずっと雁屋に居たからね〜。それでも、進君が来るなら、僕より早いはずだよね〜。おかしいなあ」
「桜庭さん、今、何時ですか?進さん、定時の食事時間だったら、来ないんです」
「な…っ…そんなので、戦えるのおっ?!もおっ!何やってんだよ、進っ!」
「呼んだか、桜庭」
桜庭の叫びに、いつもどおりの進の言葉が重なる。
「何、やってたんだよっ、進!呼び出し、あったんでしょっ?!」
「定時に食物摂取せねば、動けんからな」
「そんなの、どーでもいいから、ヒル魔が呼んだらすぐに来なよっ!ほら、行くよっ!ヒル魔ひとりで戦わすつもりっ?!」
有無を言わさない桜庭の勢いに押され、沈黙していた3人は、内心、『ヒル魔ひとりでも、大丈夫だと思うんだけどね〜』『今まで、これでやって来たんですけど…』『動けなければ、来たとて仕方なかろう』と、それぞれ思っていたのだが、ヒル魔が絡んだ時の桜庭に、下手な事は言わない方が良い、と賢明な判断をし、ヒル魔の後を追った。
一方、こちらは戦隊スーツをまとった、怪しい人物に突然突っ込んでこられたバイクの皆様だ。
「…カッ!危ねーな!死ね!バァーカッ!」
先頭を走っていた、白い長ラン姿の男が、小学生並の悪態をつく。
「死ねと言われてハイそーですか、つって死ぬバカが、どこに居るってんだ、バカ」
ヒル魔も小学生並の悪態に、それに負けない幼稚さで、悪態をつき返す。
「…ヒル魔…っ?!おま…そのかっこ…」
「ルイさん、こいつらですよ!こないだはマスク被ってたけど、そのスーツ、間違いありません!」
驚く長ランの男…ルイ、と呼ばれた男が、苦々しい顔で、呟く。
「…敵って、よりにもよって、コイツかよ…」
「何か言いたそうだが、言う前に嫌でも聞かせてやる。つか、ありがたく聞きやがれ。ひとーつ!人より俺の為!」
追いついたメンバーが、それに続く。
「ふたーつ!ふとどき許さずに!」
「みーっつ!みんなで退治だよ〜」
「よっつ!呼ばれて来るとは限らない!」
「いつーつっ!いつでもブラックラーヴっ!」
「んだ、そりゃあっ?!ざけてんのか、糞ジャリっ!」
「ヒル魔…おまえ…何、それ…」
ルイの言葉で、我に返ったヒル魔が気を取りなおして続ける。
「今の俺はヒル魔じゃねぇ…デビルブラック!」
「ヘタレッド!」
「エンジェルイエロー!」
「ナイトブルー!」
「ヘタレンジャーピンク!5人揃って、ヘタレンジャー!」
「てめぇだけだ、ヘタレンジャーってのはあッ!!」
ヒル魔のツッコミも何のその、勝手に決め台詞を締めるヘタレンジャーピンクこと、桜庭だった。
「う…う…っ?!」
突然、ヒル魔…もとい、デビルブラックが膝を就く。
「ヒル…ブラック?!どしたの…な、に…これ…」
突然、辺りに漂う臭気。人外のブラックは、人以上に嗅覚が鋭いらしく、その分ダメージも大きいようだった。
「油断、すんな、よ…。おおかた、今回の敵さんとやら、だろ…」
「賊学なめたらいかんぜよ。きっつーいお灸、据えちゃるけんのう!」
現れたのは、ざんばら髪にゲジ眉、黒い長ラン姿の男だった。昔懐かしい『バンカラ』という形容が何より似合っている。ご丁寧に、葉っぱをくわえているあたり、ふた昔前の野球漫画のレギュラーを彷彿とさせた。
「ほんまにいたんじゃのう、正義の味方っつーのは。いやあ、驚いたもんじゃのう」
がはがはと豪快に笑う姿は、とても悪人には、見えない。人の良い、バンカラにーさんそのものだ。しかし男が、がはがはと笑う度に、くわえた枝に花が咲き、辺りに臭気が漂う。男子運動部ロッカールームの汗と埃を長期間密封して熟成し、開放したような臭いとでもいうか、腐った玉葱や腐った卵という硫黄臭とまではいかないまでも、男臭い、としか言いようのない微妙な臭いは、マニアでなければ耐えられるものでは、なかった。ちなみにマニアも一瞬の臭いを楽しむ派と、密封保存・冷解凍派に分かれると言う。これをマニアとするか、フェチとするかでも別れるらしいが、それはここでする話ではない。
臭いに戸惑うレンジャー達に比べ、賊学の皆様は慣れているらしかった。
「てめぇに恨みがあるにせよ、こんなんで戦いたか、ねんだけどよ…あれ、俺には止められねぇから、ま、相手してやってくれ。ヒル魔」
ルイさんが、仇を取ってくれるはず!と思い込んでいる新米下っ端をよそに、戦う気などハナからないのが見え見えな態度のルイが、膝を就いたままのブラックに、こそり、と言う。
「デビルブラック、だ」
「この際、何でもいい。操られてるらしいんだけどよ、あれ。俺もワケ有りなもんでな…。戦うフリぐらいすっから、ま、好きにしてくれや」
何とも投げやりな態度であるが、ルイ自身、とにかくレンジャー達と戦う気がない、という事は見てとれた。
「いつから、そんな口聞けるような身分になったんだ、てめぇ…?」
膝を就いたままの状態で、バイクに跨ったままのルイを睨みつけるブラック。自分で、今はヒル魔じゃない、と言いながら、ヒル魔とルイの主従関係をここで持ち出すあたり、矛盾も甚だしいが、とにかくこの場から早く逃れたいらしいルイは、そんな事は気にならないようだった。単に気付いていないだけかも、しれないが。
「…とりあえず、戦うかっこぐらいはしますから、好きにしてくれて構いません。お願いします。ヒ…デビルブラックさま」
「わかってんじゃねぇか…いい子だ」
傲慢な笑みをくれてやりながら、ブラックが立ち上がった。
「行け、トカゲリアン!ヘタレンジャーどもを潰すんだ!」
勢いはあるが、やる気のなさは見え見えの棒読みで、ルイが叫ぶ。黒の長ラン姿の男は、ふた昔前に日本に一大ブームを巻き起こしたエリマキトカゲの巨大化した怪獣の姿へ変化を見せる。
「来い、トカゲリアンとやら」
ブルーが構える。言いまわしといい、面構えといい、無意味に渋いのに笑えるのは、何故だろうか。その、どことなく笑いを誘う無意味な渋さが、あだとなった。
「む…」
変身したトカゲリアンが、がはがはと笑い、くわえた枝に花を咲かしている。臭気は、そこから発散されているようだ。宣教師ザビエルの衣服に描かれる襟のような、シャンプーハットのような、エリマキトカゲのエリが忙しなくはためき、ブルーへ臭気を集中させて送っていた。ブラックは未だ抜けないダメージの上に、人並み異常の嗅覚のせいで臭気から逃れる術を持たず、かろうじて立っている状態だった。残りのレンジャーも、次々と膝を就く。
「必殺、『男粋の華』じゃ!立ち上がれんじゃろう、ヘタレンジャーどもよ!」
進もたいがいだが、こちらも時代ががっている。しかし、見てくれはどう見ても愛嬌たっぷりのエリマキトカゲなのだった。
だが、この状態でも、ブルーの様子は変わらなかった。
かろうじて立ち続けているブラックが、ブルーへ言う。
「おい、聞け、ブルー。…てめえの糞真面目な態度が、ヤツのツボにハマってるらしい。ツボにハマれば笑い、その笑いが花を咲かす。あの花が臭気の元だ。潰して、来やがれ…っ」
「うむ」
「レッド。フォローに入れ。エリマキトカゲの走りなんざ、てめぇらふたりの敵じゃねぇ。見たとこ、武器もねぇようだし、技もひとつっきり、だ。…行け…っ!」
「は、はいっ」
敵よりもブラックの方が、ある意味恐ろしい。日頃から身にしみているレッドは、よろけながらも慌てて立ち上がる。
「ふたりの脚で追えば、捕らえられない敵ではない。挟み撃ちにするぞ」
「はい!」
「速さでは、レッドが上だ。が、力勝負になると、どう見たってブルーだからな。枝を奪うのはレッド、その後はブルーに任せておけばいい。いいな?」
「うむ。心得た」
「はい!」
トカゲリアンに向かうふたりを邪魔しようと、バイクを動かしかけた賊学の下っ端へ、ブラック携帯のマシンガンが乱射される。
「こっちは心配するこた、ねぇ!行けっ!」
「させるかっ!てめぇら、阻止しやがれ!」
ノせられやすいのかノリやすいのか、本気とも演技ともつかない勢いで、ルイが叫ぶ。ルイさん絶対!の賊学の皆様は、ブラックの乱射をかわしつつ、バイクを操り、ふたりを阻止しようとする。ブルーとレッドは僅かな隙を狙って、それをかわす。レッドはひたすらトカゲリアンのくわえる枝を目指し、ブルーはそれを援護しつつ、バイクから人を引きずり降ろし、当身をくらわしつつ、走る。操る人間を失ったバイク同士がぶつかり、派手な爆音を撒き散らす。
「なっ…な…何モンだ、こいつら…」
「相手を誤ったな」
へたり込んで戦意を失った賊学の皆様に一瞥をくれつつ、レッドを追うブルー。レッドに追い付かれたら、ヤバい、と直感したのか、トカゲリアンは逃げようとするが、哀しいかな、エリマキトカゲの身だ。とてとてとて…と、エリマキをはためかせて逃げる姿は、愛嬌はあっても、スピードはない。ブルーが追い付いた時には、あっさりと枝を奪われていた。
くわえた枝を奪われたトカゲリアンは、元のバンカラにーちゃんの姿へ戻る。枝がなければ力は出ないのか、長い舌を出して、へたっている。バイクに跨ったまま号令はしても、戦う事のなかったルイが、バイクを降りてトカゲリアンに声をかける。
「もういい、トカゲリアン…あとは、あの方に任せる事にして、ここは、退こう」
「わしら他力本願じゃのう…」
「もともと、好きでやってるわけでも、ねぇだろ…兄貴」
「あ、兄貴いぃ〜?!」
レンジャー達から、異口同音の叫びが上がる。
「ああ…俺には、操られている兄貴を止める事は、できねぇんだよ。だから、要請があれば、戦うしかねぇし…悪かったな。許せとは言えねぇけどよ…まあ、色々あってな…」
トカゲリアンをかばうように抱えながら、ルイが言う。
「操られている兄貴を守る為、言いなりになって戦う弟クン、ってヤツか?お涙頂戴ってヤツ?似合わねぇなあ、葉柱」
戦いが終わったというのに、臭気のダメージがなくなったブラックが挑発するような口調でルイに言う。
「るせぇよ。見捨てるわけにも、いかねぇだろ」
「次は、てめぇが相手、か…?」
「…さあ、な…。俺ぁ、二度とんな事したかねぇけどよ」
ブラックとしてはどうだか知らないが、ヒル魔としての恐ろしさは、奴隷としての日々で味わい尽くしているルイの本心だった。
その願いが叶うかどうか、心許ない事この上ないが。
臭気に持てる力を注ぎ込んだらしいトカゲリアン…兄をバイクに乗せ、去って行くルイを追い、賊学の皆様もきれいさっぱり、レンジャー達の前から姿を消した。


こうして、ヘタレンジャーの活躍もないままに、戦いは終わった。
お色気もなければ、合体もない。秘密基地は全く秘密ではない。予告は一体何だったのか。そんな事を考えていては、W Jは読んでいられない。
ネームチェックしてんだろ、編集!とか、締めきり間際で写植(未だに写植を使っているのかは、謎だが)が間に合わないから、適当に発注しただろ!とか、いちいちツッコミ入れたくなるのはオタクぐらいのもので、W Jのターゲット年齢層の少年達は、そんなところまで見てはいないように、戦隊モノにツッコミを入れるのは小学生から、と相場は決まっている。
つまり、よい子のみんなは、そんな事はどうでも良いのだ。大好きなレンジャーが活躍すれば、オールO K!という、純粋な広い心で鑑賞して欲しい。
果たしてルイはトカゲリアンを操る敵に立ち向かうのか。それとも、レンジャー達へ新たな戦いを挑むのか。そんな事などなかったかのように、全く別の敵が現れるのか。それは製作者にも、謎である。
次回こそは、戦え、ヘタレンジャー!
たとえそれが建前でも、一応地球の平和の為に!

インチキヒーロータイム・おしまい  2004.04.19.

次回予告

「また、てめぇかよ…葉柱」「今の俺は、てめぇの奴隷じゃねぇ…ルイルイハバシラー見参!」「面倒くせぇ…相手してやれ、ケルベロス!」「えええっ?!犬にそれって、僕達の立場って、どうなるんだよ、ヒル魔あ〜っ」「るせぇ!てめぇみてぇなヘタレより、ケルベロスのがよっぽど役に立つんだよ!」「だってヘタレてなかったら、ヘタレンジャーにならないじゃんっ」

次回、ラバヒル合体ヘタレンジャー 『ヘタレ世間は鬼ばかり』

「見ろよ、糞ガキども!」「ピンクはいつでもブラックラーヴっvv」(銃声)


※タイトルの『ヘタレンジャー』はサイト掲載にあたり湯毛ユッケさまの使用許可の許、片倉かがりが好き勝手に使わせていただいている名称です。