水辺空間保全シンポジウム
〜新堂の樋を考える〜  2007.2.4

 

 1959年に起こった伊勢湾台風は、日野川堤防の決壊を招き、大きな被害を北里学区にもたらしました。以来、日野川改修は北里住民の積年の願いでありましたが、時代はその後50年余りの間に大きく変革し、日本は高度成長時代を迎え、物質的な豊かさの代償として自然環境が大きく失われてきました。

 ドジョウやメダカがごく普通にいた環境は、北里学区でもほとんど見られなくなりましたが、幸い小田町には先人が残してくれた「新堂の樋」から、豊富な日野川の取水ができ、農業用水だけでなく、町内の小川を潤してきました。それは、渇水期でも枯れることなく、オイカワやアユが群れ泳ぎ、人々の生活に潤いと安らぎをもたらしてきました。ところが今、その取水口が改修のため大きな危機に直面しています。改修によって河床が現在より2mあまり下げられ、このままでは自然取水ができない状態になるのです。

実は、今まさにその現実が起こっています。現在渇水期に加えて小田町の取水堰が一部崩れており、堰の役割を果たしていません。ポンプで汲み上げない限り取水ができない状態が続いており、町内の小川には生活排水のみが溜まり、魚たちは白い腹を見せ、貝は大きく口を開いて異臭を放っています。かつてのせせらぎが、ドブ川へと変わりつつあるのです。この状態が続けば、更に周りの環境へも悪影響を及ぼすことでしょう。ボウフラが湧き、悪臭を放つ排水路に、誰が愛着をもてるでしょうか。

さらに、町内の道路は狭く、火災時には消防車が入れない状況もあり、この川の水が防火用水としての役割も果たしてきたことから、こちらも大きな問題となっています。

このように非常に大切な町内の小川を、今を生きる私たちが次代を担う子どもたちに引き継いでいく役目があるのではないでしょうか。治水という大きな目的を持つ日野川改修と、私たちの生活環境に無くてはならない「新堂の樋」の豊かな水の保全は、相容れないものなのでしょうか。今、私たちの生活に必要なものは何なのでしょうか。シンポジウムを通してその答えを探りたいとの思いから、この度小田町自治会との共催で「水辺空間保全シンポジウム〜新堂の樋を考える〜」を開催しました。


来賓でご挨拶頂いた冨士谷英正 近江八幡市長

その他の来賓の方々
  ・滋賀県東近江地域振興局建設管理部河川砂防課 西川課長様
  ・北里公民館 北館長様
  ・北里小学校 大原校長様
  ・北里幼稚園 橋本園長様


日野川改修の進捗状況と今後の取水について説明頂いた県 西川課長

その後、基調講演「暮らしの中における環境保護」と題して、NPO法人蒲生野考現倶楽部 事務局長 井阪尚司様にご講演頂きました。
メダカの学校小田分校の活動当初からお手本とさせていただいてきた、住民と共にすすめる環境保護活動について、わかりやすくお話し頂きました。


その他に、各方面からパネラーをお招きし、合同報告会を行いました。
・水辺のもたらす恩恵や水辺での生物の多様性等、琵琶湖の魚を通じての身近な環境について「琵琶湖博物館うおの会」武田繁様から。
・村落と用水の歴史について、近江八幡市史編纂室 亀岡哲也様から。
・小田町の昔の川と暮らしの関わりなどを、光栄寺ご住職 広瀬正秀様から。お話の一部はこちらです。
・メダカの学校小田分校の活動と町内の川の現状について、事務局の瀧口喜三男が報告しました。
町内の皆様方には、大変長時間に渡って熱心にご参加いただきありがとうございました。
昔の小田町の川のきれいさ、大切さをご存じの方ばかりでしたが、これから先の子どもたちの世代にもこの宝を引き継いでいくために、私たちが今できること、しなければならないことをみんなで考えて行動しましょう!


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