最近の京都府の公立入試レポート。
京都府の高校入試はここ10年程で、大きく変わった。長引く不況も原因の一つと考えられるが、
公立高校の入試制度改革が最大の要因となっていると考えられる。これまで京都の公立高校は、
高校間の競争がゆるやかで、大学受験に大きな成果を出せなかった。
そのため、中学校の成績上位層は名門私立高校へ進学し、難関大学を目指すのが一般的であった。
公立高校が大学進学の指導に本腰を入れない時代が長く続いた。10数年前、大学受験に力を入れた
英語科やコスモス科が設立されたのがその時点で話題になっただけで受験地図を塗り替えるほどの強烈な影響力はなかった。
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洛南高校
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また、一部の公立高校が京都府の重点校となり、大学受験の指導や生活指導に力を入れていると言われるように
なったが、大きな成果は見られなかった。公立高校の長い長い低迷期に、難関大学の受験競争を乗り越えた
私立高校である洛南・洛星・京女U類などは、中学生の大きな進学目標となった。
このため、京都府では「私立高校時代」が長く続いた。しかし、1999年、「私立高校時代」を変える大きな出来事があった。
それは、この年に新たに堀川高校(京都市立・男女共学)に探究科(160名)が設立されたことである。
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京都女子高校
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堀川高校の探究科は特別待遇のクラスで、それまでの狭い学区制の枠を越えて、
京都府下全ての地域から受験可能で、しかも入試日が府立高校の統一試験日よりも先に実施され、
京都府下の高校生なら誰でも受験できるという別格のクラスである。
そのため、難関私立高校を併願受験したトップレベルの生徒たちが、京都中から集中するという現象が起きた。
この結果、創立わずか10年程であるにもかかわらず、入試難易度が急上昇し、洛南V類とほぼ同等のレベルになっている。
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堀川高校
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入学後の授業進度も速く、英語・数学においては、高校2年生の11月までで3年間の全過程をほぼ終了し、
その後は、大学入試問題の演習に多くの時間を割いている。また、高校3年生に対しては、土曜日には教室を
開放しており、やる気のある生徒たちには学習環境が十分に整っているといえる。
高校1・2年の時は、
時々日曜日に学校で予備校の模擬テストを受験することとなっており、わざわざ知らない予備校まで通う必要もない。
堀川・探究科の大学入試センターテストの平均点も探究科160名で700点台(全国平均約570点・900点満点)と高く、
京都府下の高校では最も高い得点を勝ち得ている。
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西京高校
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また、堀川高校は公立のため授業料が無償であり、経済的にもかなりの負担減となっている。
堀川の探究科は国際感覚を身につけるための研修旅行がニュージーランドである。旅行費が別に約30万円必要だが、
生徒たちにとって貴重な経験であることを考えれば、必要経費内であるといえる。
また、年に数回、各界の著名人を呼んで講演会も行われている。これは、土曜日を利用して行われており、
希望すれば保護者も自由に参加できる。大学入試合格状況(2014年度)をみると、東大9名、京大46名、阪大19名・・・
と15年目の実績としては、驚くべき数字を残している。
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南陽高校
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ちなみに洛南高校は東大24名、京大79名、阪大41名、洛星高校は東大13名、
京大62名、阪大11名である。数字的にはまだまだであるが、2015年度以降難関大学の合格者数も飛躍の一途をたどることが予想される。
堀川の入試科目は英・数・国・社・理である。問題は他の公立高校と比較すると格段に難しい。
京都府下のトップ層が集う入試であるから、かなりの高得点が要求される。これまでの難関私立高校と
同等の学習が必要となる。要するに堀川高校は、公立高校の中に出現した最難関校であり、京都の受験地図を大きく
塗り替える切り札的存在である。
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西城陽高校
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さて、2003年、第二の堀川高校といわれる西京高校(京都市立・男女共学)にエンタープライジング科(160名)が創設された。
西京高校のエンタープライジング科は新体制の2番手校として作られたクラスで、入試制度も堀川高校と同様に特別待遇である。
昨年の学校説明会も1000名以上の保護者・生徒達が集まり、その期待の大きさを物語った。
試験日は、堀川高校と同日のため堀川の次のレベルの生徒が集中する。堀川効果の影響が大きく、2年目にしていきなり
入試難易度が洛南T類とほぼ同レベルになっている。
ここに、京都の公立高校には堀川高校、西京高校の2大難関高校が出現し、これまでの京都の高校受験に根本的な変革をもたらした。
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莵道高校
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従来、京都府南部では南陽高校、西城陽高校、菟道高校は比較的レベルの高い高校と考えられてきたが、この3校には
難関の堀川高校と西京高校に惜しくも不合格になった生徒たちが回ってくるため(堀川・西京は試験日が別であるから、不合格者は
もう一度公立高校を受験することができる)、かなり高得点の戦いになる。このように堀川高校の出現は京都の公立高校の
レベルアップに大きな影響を及ぼしているのである。
これによって、京都の公立高校は堀川高校を頂点とし、西京高校、嵯峨野高校、桃山高校、南陽高校、菟道高校、西城陽高校と階段状に新しい
ランキングが成立しつつある。このため、これまで単一の高校受験を強いられていた公立高校の希望者は、自分の実力に
見合った高校を選択できるようになり、選択の幅が大きく広がった。
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京都八幡高校
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近年の公立高校の変革によって、難関大学を目指す学生は
私立高校に行かねばならないという、これまでの考え方を大きく変え、成績優秀な中学生の多くが公立高校を目指すように
なってきた。つまり、新たな「公立高校の時代」が到来したと考えられる。
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京都八幡高校(南校舎)
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国公立校 |
堀川 | 69 |
京都教育大附属 | 68 |
西京 | 63 |
嵯峨野 | 63 |
桃山 | 62 |
南陽(サイエンス) | 62 |
南陽(アドバンス) | 59 |
西城陽(アドバンス) | 53 |
莵道(発展) | 53 |
※この数字は五ッ木模試による、おおよその目安です。
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