「小水力発電から学ぶエネルギー自立」〜小水力発電における現状と課題〜 

2010−10−19(火)19:00〜20:30     於:滋賀県東近江市役所

   ニューパワー有限会社  岡田 弘  

エネルギー自立の背景
われわれが生活する経済社会は生物圏の限界に達し、成長の限界にある。地球の再生能力はもはや経済的要求に応えることはできない。人間は生態系にただ乗りしてきた。例えば木を切り出す人件費や運搬費は負担しても、木を切った後におきる自然災害の代償は払ってこなかった。

身近な自然エネルギー
 自然エネルギーには太陽光を源とし風力、水力、バイオマスなどがある。
ここでとりあげる身近な自然エネルギーは環境負荷の少ない小水力である。日本は雨期と乾期の極端な差がなく、年間を通じて短い周期で雨が降る。また国土面積に占める山林の割合が多く、水が涵養され、いわゆる緑のダムが形成されている。日本全土に渡って稲作が発達していて農業用水路がはりめぐらされている。今ではこれらの水路は、ほとんどがコンクリートで作られ水勢を弱めるため所々に落差工を設置している。
 市街地でも、車の走り出さない早朝に歩いていると水の流れがあちこちで聞こえ、隠れた水源が豊富にあると気づく。

東近江市は鈴鹿山脈から琵琶湖にいたるまで一つの水系でつながった、自然の豊かな恵みを持った地域である。太陽光エネルギーはじめ鈴鹿山系の風力、豊かな森林バイオマス、愛知川水系の大きな包蔵水力など地域の自然エネルギーに恵まれている。また、水力の利用では古い歴史をもつ能登川水車がある。風力の利用では八日市大凧があり、住民パワーの大凧作りを今に伝えている。

一般に自然エネルギーは、
   @ エネルギー密度が低いため、発電装置が大形になり重量軽減が困難。 
   A  自然条件の変化に左右され、安定した発電は期待できない。
   といわれている。
 ところが水の密度は空気の密度の約800倍あり、エネルギーが凝縮された自然エネルギーである。季節変化はあるけれども数日単位の変化は殆どない安定した自然エネルギーである。
 水車形式

水車の形式

特   徴

ペルトン水車

高落差

クロスフロー水車

中落差

フランシス水車

広範囲落差

プロペラ水車

低落差

解放周流形水車

低落差、開水路

   表1 水車の形式と特徴


解放周流形水車の例 能登川水車(水車資料館)

これも小水力発電機
ここでご参考までに現物を紹介する携帯形水力発電機の主な仕様は表2に示す。出力表を表3示す。

   式

  HP−50

400mm

 車 幅

200mm

50W@落差1m

40W@落差80cm

発電開始流速

1.6m/s

      

6.8kg

バッテリー電圧

DC 12V

       表2 主な仕様

落差 cm

30

50

80

100

出力  W 

15

25

40

50

 

流量L/s

16

         表3 出力表


業用水路に設置した携帯型水力発電機
滋賀県大津市比良の山中

水車は水の流れによりマイナスイオンが発生し、また水の流れる音が快適で心地よい。

詳しくはja3ckfのキーワードで検索すると出てくるWebサイトをご覧ください。

自然エネルギー発電と省エネルギー
 発電と同時に大切な事は消費における省エネルギーである。いくら効率よく発電しても一方で浪費しては何もならない。省エネは効率の良い発電機を持つのと同じことになる。

 この省エネ感覚を養う方法に有効な方法がある。ささやかながらも自分で発電してみるとエネルギーの大切さが身にしみて解り、省エネする気にもなる。より消費電力の小さいものを求めることになる。自分で自然エネルギーで発電し、その電気をその場で消費すると発電と消費が身近にあり解りやすい。

小水力発電、風力発電や太陽光発電などを目の届く所で使用し、他の電力供給を可能な限り受けない使い方を心がけ実行すると省エネせざるを得なくなる。

 電気をこまめに切るようになり、消費電力の少ない電気機器の選定をする習慣が身に付く。さらに、積極的に電気機器メーカに省電力、特に待機電力の小さな機器の商品開発を働きかけることになる。