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身近な自然エネルギーを体験しよう

講演会  2009−10−31(土)14:45〜16:00
於:滋賀県職業能力短期大学校

   ニューパワー有限会社  岡田 弘


1.まえがき
 徒歩で持ち運び可能な携帯電源ができないか。その燃料(エネルギー源)は現地調達可能な自然エネルギーで。携帯用風力発電機、小型太陽電池、携帯型水力発電機を紹介し、現物に手で触れ体験していただく。
 この電源の使用目的は最初はアマチュア無線のトランシーバの電源であった。その後、キャンプの電源や災害発生に備えた非常用電源としても使われるようになった。また、学校や自治体の環境教育や啓蒙活動に使われている。


2.開発の背景と使用目的
 ここに紹介する携帯用軽量風力発電機はアマチュア無線の屋外移動運用の必要性から開発した。1992年から研究開発を始めた。文献など調べたが世界中どこにもなさそうなので、自前で試行錯誤しながら試作を繰り返した。1994年に使用出来そうな機械が完成したので実用テストを開始した。
 無線用の電波の飛びのよい場所は商用電源が得にくいものである。ほとんどの本格的な野外運用の無線マニアは大形のバッテリーや発動機発電機(発発)を使っていた。
 これらの電源は
@.重量が大きく持ち運びに不便。
A.発発は騒音が大きく、また排気ガス  が出るのでせっかく見つけた展望の  きいた電波の良く飛ぶ場所でも人の  多い駐車場や公園などでは使用でき  ない。
B.車で近づけない、さらに見通しのよ  い場所は、電源装置の重量の問題で  担ぎ上げにくい。
C.バッテリー容量の制限や危険物であ  る大量の燃料の保管の難しさから長  時間の運用に適していない。
 
 アマチュア無線という趣味を楽しむくらいは、クリーンエネルギーを使ってみたいと考えた。
 一般に自然エネルギーは、
@.エネルギー密度が低いため、発電装  置が大形になり重量軽減が困難とい  われている。
A.また、自然条件の変化に左右され、  安定した発電は期待できない。
  と思い込まれ、アマチュア無線用の  電源には、ほとんど使われていない  のが当時の状況であった。
 
 はたして本当だろうか。電波の良く飛ぶ高台や障害物のない広い場所は、よい風が吹いているし、日当りのよい所でもある。


3.開発の重要ポイント
@.支柱の軽量化
 当時から外国では優れた性能のマイクロ風力発電機が製造されていた。しかし、携帯するという発想はなく、支柱も含め徒歩で携帯できる風力発電機はなかった。支柱は風力発電機と無線用アンテナを支えるこのシステムの文字通り要の位置にあり重要な構成要素である。携帯用風力発電機を実用化すには、支柱の軽量化が不可欠である。
 従来の考え方は支柱は剛性のある材料で製作し、風の反力によってなるべく支柱が撓まないように製作する。風車の回転軸がぶれないように支柱を堅固にすることで、風車は一見安定して運転されているように見える。また、風車の回転による動バランスが多少崩れていても支柱が堅固に製作されていると、風車は安定して回転しているように見える。
 携帯用風力発電装置として考えると支柱の軽量化なしには成り立たない。重量のある支柱を徒歩で持ち歩くのは困難である。プロペラ型の風力発電機を実地で試験をすると、支柱を細くし弓なりにしならせた方が、堅固に製作した支柱に比べ風力発電装置システム全体が乱気流に対して非常に柔軟に対応して破損し難いと言う事実が判った。「柳に枝折れなし」を想像すると理解し易い。 

A.風車型式の選定
 携帯用風力発電機として揚力型のプロペラ型を選定した理由は理論効率が高く、風車羽根の重量、体積ともに小さく設計できるからである。回転数も高くできるので発電機単体も軽量化し易い。プロペラ型など揚力型風車の欠点は起動トルクが小さいことである。このため発電機単体の起動トルク低減に苦労することになる。起動トルクが非常に小さいく、軽量な発電機の開発が必要になる。
 前述のコンセプトにより支柱、風力発電機全体に軽量化を計り、改良に改良を重ねて実地に試してきた。そして風車のメカニズムと発電機単体との最良のマッチングを得た。


4.風力/太陽光ハイブリッド電源
 ほとんど風の吹かない日や場所もあり、小さなバッテリーの蓄えがなくなることもある。太陽電池だけに頼っていても、雨天はほとんど発電しないし、夜は全く役にたたない。
 風力発電機と太陽電池を併用すると両者はうまく補完しあい、バッテリー容量を大幅に小さくできる。このことは移動携帯電源とする場合に限らず大きな重量を占めるバッテリーの重量軽減により発電システムのトータル重量の軽減が可能である。
 この自然エネルギーシステムは燃料補給はもちろん不要で、面倒なオイル交換も必要ない。


5.災害発生時の電源と通信手段
 災害発生に備えて平常時に防災訓練や非常食の準備などが必要である。しかし一旦、地震や洪水など大災害が発生した時はライフラインがストップする。最悪の場合はある地域が孤立する。孤立する地域を予め予測することは困難である。
災害が発生した時は先ず現地の情報発信手段と最低限の照明が必要である。
 孤立地域の出るような大災害では携帯電話も含め一般電話は中継基地が被災し緊急災害時に役に立たない。業務用無線、アマチュア無線など中継のいらない通信手段が有効である。そしてその電源確保が重要ポイントになる。孤立すると予想される地域の全てに非常電源を常設しておくのは困難で、孤立地域外部から発電機材を供給する必要がある。孤立地域だから道路が寸断されているので車の使用はできない。このような状況化では携帯型風力発電装置が役立つ。


6.携帯型マイクロ水力発電機
 もう一つの身近な自然エネルギーは水力である。日本は雨期と乾期の極端な差がなく、年間を通じて短い周期で雨が降る。また国土面積に占める山林の割合が多く、水が涵養され、いわゆる緑のダムが形成されている。日本全土に渡って稲作が発達していて農業用水路がはりめぐらされている。したがって、30cm〜1m程度の低落差の水の流れは山間部に限らず市街地にもいくらでもある。車の走り出さない早朝に市街地を歩いていると水の流れがあちこちで聞こえ、隠れた水源が豊富にあるこに気づく。
 これら誰も利用してない捨てられているエネルギーを利用するのが設置工事が不要な携帯型水力発電機である。当然、水路の管理者の許可を受けてから利用する。


7.自然エネルギーと省エネルギー
 携帯用風力発電機や太陽電池、水力発電機などを使用し、他の電力供給を一切受けない使い方を心がけ実行すると省エネせざるを得なくなる。
 電気をこまめに切るようになり、消費電力の少ない電気機器の選定をする習慣が身に付く。さらに、積極的に電気機器メーカに省電力、特に待機電力の小さな機器の商品開発を働きかけることになる。

 詳しくはja3ckfまたはニューパワーのキーワードで検索すると出てくるWebサイトをご覧ください。