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セタシジミ

セタシジミは、もともと琵琶湖水系にしか生息していない固有種です。セタシジミは、個体により雌の区別があり(河川などに生息するマシジミは雌雄同体です)、体外受精を行います。主な生息場所は,底質が砂、砂礫、小礫、砂泥の水深10m以浅のところです。

昭和40年代ごろまでは、岸辺にもたくさんのセタシジミが生息していて、水遊びを楽しむ子供たちが足で貝をつかんで持ち帰り、晩ご飯のおかずにしていました。セタシジミを材料にした味噌汁、しぐれ煮、シジミ飯等は、家庭の味として古くから親しまれてきており、琵琶湖の特産品としても広く知られています。

しかし、その漁獲量は、昭和32年には6,072トンありましたが、その後、急減し、現在では100トン以下の水準で低迷しています。この原因としては、漁船の動力化で漁獲圧が高まったこと、湖中砂利の採取や河川からの泥の流入によって生息場所である砂地の減少、さらには水草の大繁茂による湖底環境の悪化などが考えられています。

一方、資源回復に向けた取り組みとしては、種苗生産、砂地造成及び漁獲規制等が行われています。これらのうち、種苗放流について当協会では、平成17~19年度にかけてD型仔貝(13~30億個体)の放流を実施してきましたが、さらに放流量の拡大(第5次栽培基本計画ではD型仔貝100億個体)となると、大量の親貝の確保や新たに施設を拡大することが財政的にも困難な状況にあることから、自然の生産力をうまく活用した資源増殖の新たな取り組みを模索していました。

このようななか、滋賀県水産試験場の調査により、産卵前の秋~春にかけて富栄養水域である琵琶湖周辺内湖の西の湖(近江八幡市)に親貝を垂下すると、産卵量の指標となる肥満度が琵琶湖漁場で採捕した親貝よりも、大幅に高くなることが明らかになりました。

この新しい知見は、手間をかけずに、”より産卵に適した親貝“を確保できるため、活用が大いに期待されることから、当協会では平成26年度から滋賀県水産試験場と共同で「セタシジミ増殖実証事業」として取り組んでいます。
本事業は、12月頃に琵琶湖漁場で採捕した親貝を西の湖まで移送し、5月頃まで垂下養成して肥満度を高めた親貝を2か所の試験漁場(近江八幡沖島、彦根松原の両地先)に再放流、産卵させ、資源を回復・向上させる手法を確立することを目的としております。

琵琶湖の漁業や漁獲量など詳しいことは滋賀県水産課を御覧ください。ほかに、滋賀県琵琶湖博物館のページもあります。

セタシジミ増殖実証事業の位置図とあらまし

位置図
セタシジミ増殖実証事業位置図 セタシジミ増殖実証事業あらまし

セタシジミ増殖実証事業の取り組み

セタシジミ親貝採捕 セタシジミ垂下肥育

琵琶湖の漁場よりセタシジミ親貝を採捕します(12月頃)(左)。採捕したセタシジミ親貝を西の湖で垂下肥育します(2月頃)(右)。

セタシジミ親貝再放流 セタシジミ仔貝生息調査

垂下肥育したセタシジミ親貝を試験漁場(彦根松原)へ再放流し産卵させます(5月頃)(左)。肥育親貝の再放流場所近辺で産卵ふ化した仔貝生息数調査(彦根松原)(右)。

セタシジミ仔貝計数 確認されたセタシジミ仔貝

試験漁場から採集したセタシジミ仔貝の確認と計数(左)。  仔貝調査で確認されたセタシジミ仔貝(右)。

セタシジミ増殖実証事業の取り組みの効果

再放流したセタシジミ肥育親貝の産卵後、8月における放流水域近辺のセタシジミ仔貝生息数は、琵琶湖の他の生息水域よりも多く、肥育親貝放流の効果が得られたと考えています。

また、セタシジミ仔貝が親貝放流場所から離れた水域からも確認されたことから、今後、事業の展開を図る上で、参考になると思われます。